
そうね──奇妙な女の子だったわ。違和感をぎゅっと凝縮したというか、間違い探しの間違いというか──。
そうね──それよ。小学生。
両腕の欠落している小学生の女の子。

それは、運命なんかではなく。
「久しぶりだね」
ただの偶然──不運な、偶然。
「……二年ぶり? 私のことを覚えているかな、
小さな幸せと小さな営みが紡がれつづける町の商店街。
在籍する私立
彼女が着ている服は観音逆咲の制服。
「私、
ちょっとだけ寂しげに
肌を刺す風は初冬の冷気。
克美と名乗った少女の髪が
「……克美ちゃん?」
それは知っている名前だ。胸に突き刺さる名前だ。記憶のなかのその人物より、彼女はずっと
「……覚えていてくれた?」
「…………」
彼女は、鈴音の中学時代の友達。唯一、一緒にいてくれた友達。もちろんそう思っていたのは鈴音だけかもしれないけれど、思いだすだけで苦しい中学時代で、克美の存在がどれだけ自分を支えてくれたかわからない。
けれど、鈴音は彼女に合わせる顔がない。
中学時代。
何度も会いにきてくれた
「克美ちゃん──同じ学校だったの?」
「うん。そうみたいだね」
克美は、そんな自分に変わらない笑みで応えてくれた。
「まぁ──鈴音はうちの学校じゃ有名だし、私もかなり前から鈴音が同じ学校にいることを知っていたんだけどさ。これまで声をかけることができなかった」
鈴音は表情を崩して、他に何もできず──ただ頭を下げた。
「ごめんなさい」
「謝る? なんで謝る? 中学時代、鈴音は悪いことをしたわけじゃない。他人の声が
そこで言葉を切って、克美は商店街の道沿い、一つの喫茶店を指さした。
「
「え──あ、うん」
鈴音は反射的に
常連なのだろう気さくな口調でコーヒーを二つ注文して、克美は一つの席に腰かけた。そして所在なげに立ち尽くしている鈴音に
「座れば? 鈴音、そういうところは変わらないね」
「……どういうところ」
「遠慮がちなところ。あらゆることに。とりわけ、自分が幸せになることにね」
わかるようなわからないようなことを言って、克美は手招きする。変わらない。彼女は変わっていなかった。中学二年だったころ、自分が拒絶してしまった友達。最後には彼女も
「ずっと謝りたかった。鈴音」
克美はやはり寂しそうに笑っていた。
鈴音は席に座り、
「え──」
「ずっと友達だって、約束していたのに。私は、鈴音を遠ざけたから。それがずっと心残りで、謝りたくてしょうがなかった」
沈痛な表情で克美が頭を下げる。鈴音はどうしたらいいかわからなくて、ただ戸惑って、手を振ってそれを否定した。
「違うよ。謝らなきゃいけないのは──あたし。あたしなんだよ。克美ちゃん。ぜんぶ嫌になって、拒んで遠ざけて、閉じこもったのはあたし。克美ちゃんは、そんなあたしに何度も会いにきてくれたじゃない……」
「最後までつづかなければ意味はないよ。けど──ありがとう」
かたん、と声もなく店長がコーヒーを置いてくれる。
「じゃ──仲直りしよう。両成敗ということでさ。私は悪かった。
「あ──」
鈴音は心の奥で強ばっていた傷跡が消えていくのを感じた。克美は、やはり克美だった。鈴音の好きな克美だった。それほど派手ではなく、いつも目立たない彼女だけれど、心根は
鈴音は情けないことに涙ぐんでしまって、それを気取られないよう
「──うん」
「じゃ、乾杯。っていうのも変かな? まぁいいよね」
こつん、と互いにカップをぶつけて、それから二人は色んなことを
それでも克美は一緒にいてくれた。