
何も聞こえなかった。
河口付近で
セミの声くらいなら、どこかから聞こえてきてもよさそうなものだけど、不思議と耳をすませても、今は何も聞こえなかった。
物静かなテトラポットの上に、
八月三〇日の夕暮れ時は、
まぶた一枚分の
彼女に初めて会ったのも、このテトラポットの上だった。
二年前の四月八日、ちょうど午後六時
──あの時、僕は、ただ一人でいたかったんだ。
そこに誰かが現れても、相手にするつもりなんてなかったのに。
相麻菫は言った。
──泣いているの?
そのシンプルな質問に、思わずケイは、反応してしまった。
どうしてそう思うの、と、
ケイは誰かと、出会うつもりなんてなかったのに。相麻菫は無理やり、浅井ケイと出会った。
目を開く。
あの
ゆっくりとした口調で、ケイは尋ねる。
「アンドロイド当てを覚えているかな?」
「相麻菫の質問ですか?」
ケイは
あれは二年前の、四月二八日だった。ケイたちは中学二年生で、三人は放課後の屋上にいた。中学校の
あの時の相麻とまったく同じ言葉を、ケイは口にした。
「私たちの中に、アンドロイドがいると仮定しましょう」
浅井ケイ、春埼美空、そして相麻菫。三人が
あの頃、ケイはずっと、彼女が出した問題について考えていたように思う。
──私たちの中に、アンドロイドがいると仮定しましょう。
アンドロイド。人間そっくりに作られた、だが人間ではない何か。
相麻菫は、ケイと春埼に尋ねた。
──アンドロイドは、誰?
「僕たちが初めて、顔を合わせた頃の話だ」
ケイと春埼の関係は、あの日から始まった。アンドロイドが誰なのか、相麻菫が尋ねた日から。
ケイはゆっくりと