Part 01: 魅音(私服): これで完了、っと。……よーし、やっと終わったぁ~! 詩音(私服): ほんと、ようやく片付いたって感じですね……。お姉が近隣の温泉街での実証データを持っていなかったら、根拠がないって即却下の憂き目に遭うところでしたよ。 魅音(私服): いやー、どんな資料でもとりあえず集めておくに越したことはないってやつだねー。あっはっはっはっ! 魅音(私服): それにしても、町会の賛同をあっさりもらえたのはまぁいいとして……まさか、役所への提出資料の作成でここまで手間がかかるとは思っていなかったよ。 魅音(私服): 「請願書だったらワシらに任せておけ!」って自信満々に言うから年寄り連中に託したってのに、上がってきた最初のやつが……はぁ……。 詩音(私服): まったくです……みんな、公的な文書だというのに好き勝手に書いて、理屈より感情を盛り込み過ぎです。 詩音(私服): どうして路面バスを復活させる必要があるのか、っていう一番肝心なところの説明とデータが何ひとつ書かれていませんでしたからね。 魅音(私服): しかも、「認めなかったら#p祟#sたた#rりがあるぞ」ってなに?お願いする相手を脅迫してどうするんだって話だよっ! 魅音(私服): あの連中、県のお偉方を説得する気があるのっ?暴力団の交渉でも、もう少し穏やかで丁寧な物腰で相手に臨むってのにさー! 詩音(私服): ……だからって、こっちに向けて八つ当たってこないでください。私だってお姉と同意見で、呆れているんですから。 魅音(私服): あ……ごめん詩音、つい。終わったテンションもあって、我慢していたものがなんか大爆発しちゃったっていうか……。 詩音(私服): くっくっくっ……まぁ、いいですよ。頭の固い町会の連中を相手にして、色々と面倒な交渉をしていたんですから。 詩音(私服): 無責任に思いついたことを相談するだけで、面倒な話し合いをお姉任せにした私よりも鬱憤が溜まっていて、当然だと思います。 魅音(私服): まぁ……それは……。 詩音(私服): それにしても……どうも#p雛見沢#sひなみざわ#rの年寄り連中はダム戦争以来、権力を持っている相手に対して若干見下し気味のようです。 詩音(私服): 観光地化するにあたっては国との連携が必須なので、そういうところはぜひとも意識改革していくべきだと思うんですが……さて、どうしたものやら。 魅音(私服): 今すぐには難しいだろうね……年寄り連中は、一度国に逆らって成果を上げたっていう甘美な成功例を覚えちゃっているからさ。 魅音(私服): それに、市民運動にどっぷり浸かりすぎると権力を持っているお偉方を説得して味方につけるより、数の暴力で言う通りにさせようとするそうだし……。 詩音(私服): ゴネ得ってやつですか。……それって民主主義の悪用だと思いますよ。 魅音(私服): いやはや、民主主義ってのは難しいねぇ。これからを生きる私たちは、反面教師にしないとさ。 魅音(私服): まぁそれはさておいて、今回のアイディアは路線バス営業の再開を県議会に訴える……か。うん、詩音はいいところに目をつけたね。 魅音(私服): ただ問題は、お上の方針で廃止されてからまだそれほど日がたっていないってことだね……。さすがに、すぐの復活は難しいんじゃないかなぁ。 詩音(私服): えぇ……それは、私もわかっています。でも、お姉が以前言っていたように雛見沢の産業を発展させるには、観光業に注力するのがベター。 詩音(私服): そして、出資者が集まったおかげで立ち上がった村外れの温泉街をさらに盛り上げるためには、公共の交通機関が絶対必要になってくるはずです。 魅音(私服): ……確かに。マイカーのお客頼りだと土日祝日と平日との来客数の差が大きくて、安定した採算が確保しづらくなるしね。 魅音(私服): 平日でも遠出が可能な主婦層、高齢者……これらの客層を掘り起こすには、交通の便の充実を行ってこそだと私も思うよ。 詩音(私服): それから……他には、貸切バスでの団体客狙いも考えてみたんですけどね。 詩音(私服): 残念ながら現時点だと雛見沢温泉の知名度は低すぎるので、旅行代理店にツアーを組ませるにはなんらかの「売り」が必要でしょう。 詩音(私服): 他の温泉街と比べて、目を引くような魅力……うーん、ここはまた一穂さんたちのお知恵を拝借したほうがいいかもですね。あとは……。 魅音(私服): …………。 詩音(私服): ? なんですかお姉、こっちを見て笑って。私の顔に、何かついていますか? 魅音(私服): いや、そうじゃなくって。なんだかんだ言いながら最近の詩音は、この村のことを真剣に考えてくれて頼りになるなぁ……ってさ。 詩音(私服): 別に……そこまで思い入れがあって、こんなことをしているわけじゃないですよ。 詩音(私服): 前にも言った通り、私はこの村に対して感謝よりも恨みの方がずっと大きいですしね。ただ、私は……。 魅音(私服): ……うん、その理由は聞いた。あいつが帰ってきた時に、戻る場所がなくなっているときっと悲しい思いをさせるから……って。 魅音(私服): でも、それを込みにしても今のあんたはいろんな施策やアイディアを提案して、この雛見沢を盛り上げようとしてくれている。 魅音(私服): そのバイタリティは、本当にすごい。お世辞でもなんでもなく、本心から私はそう思っているんだよ。 詩音(私服): ……それはどうも。素直に受け取るとさすがにくすぐったいですが、お姉の気持ちだけありがたく頂戴しておきます。 詩音(私服): まぁ、こんなふうに私が考えて動くようになったのは一穂さんたち3人の影響もあると思いますよ。 詩音(私服): 彼女たちが来てからというもの、色々と面白くて新しい情報を手に入れることができましたからね。 魅音(私服): あっはっはっはっ、確かに!圭ちゃんが来た時もそうだったけど、新しい子たちが加わると楽しさが倍増ってやつだしさ。 魅音(私服): ……けど、それに触発されて動けるかどうかは本人の資質次第だと思う。だからさ……。 魅音(私服): もし……もしもだよ、詩音。あの時、私とあんたが「入れ替わって」いなかったとしたら……どうなっていただろうね。 詩音(私服): …………。 詩音(私服): 「魅音」。その点についてはもう二度と話題にも出さないと、あの時にふたりで約束し合ったはずだと思うんですが。 魅音(私服): ご……ごめん、そうじゃなくって!私は今の自分を頑張っているし、これからも頑張るつもりだよ。ただ……。 魅音(私服): 最近になってかな……雛見沢のために積極的にどんどん動いているあんたを見て、時々ふっと思うことがあるんだ。 魅音(私服): あんたが雛見沢の頭首だったら、雛見沢の町会はもっと新しいものを取り入れて……今よりもっといい方向に変わっていたんじゃないか、ってさ。 詩音(私服): ……。埒もない話です。私がこうして好き勝手に思いついたことを口にして行動できているのは、気楽な立場だからですよ。 詩音(私服): お姉のように、責任のある立場だったらこうはいきません。……それに私はあいにく、調整だの交渉だのといったことが苦手でして。 詩音(私服): お姉が今の位置にいてくれるからこそ、うまく回っているんだと私は思っています。……私もお世辞じゃなくて、本心からね。 魅音(私服): ……ありがとう、詩音。それとごめんね、変なことを言い出してさ。 詩音(私服): 聞かなかったことにしてあげますよ。私も資料をまとめ終わったハイテンションで、今はとても機嫌がいいですしね。 魅音(私服): あっはっはっはっ、それはよかった。んじゃもう夜も遅いし、そろそろ寝よっか。もちろん泊まっていくんでしょ? 詩音(私服): えぇ、お姉さえ問題がないようでしたら。あ……その前にお風呂、いただいてもいいですか?集中していたせいか、身体が少しベタつきますので。 魅音(私服): 了解。んじゃ、そこでお茶でも飲んで待っていてね。 詩音(私服): …………。 Part 02: ……風呂に入って寝床に入ってから、しばらく経った深夜。 浅い眠りのせいで目が覚めた私は天井を見上げ、魅音がうっかり漏らしたあの失言を思い返していた。 詩音(魅音変装制服): もし私が「魅音」で、魅音が「詩音」のままだったら……か……。 魅音には内緒だが、その仮定を思い描いたことは1度や2度のことじゃない。 なぜなら私たちは、そうなる「はず」だったのだ。だが、とある私たちの無邪気な「悪戯」のせいで運命は大きく変えられることになった……。 ……私たちが本来の立場と入れ替わったのは、記憶としてもぼんやりとしつつある幼少の頃。 「鯛のお刺身が食べてみたい!」「お姉ちゃんばかりおいしいものを食べてずるい!」 その日は、虫の居所が悪かったのだろうか。珍しく「魅音」がそんなわがままを言い出したので、私は姉としての特権を譲ってあげたのだが……。 運が悪いことに、園崎家頭首を示す入れ墨を身体に刻みつける儀式が行われたのが……その日の夜だったのだ。 必死に抵抗する「魅音」の泣き声を聞いた私は、その場に飛び込んだ。そして、その子は違う、私たちは入れ替わったのだ、と訴えたのだが……。 大人たちは、誰も信じてくれなかった。いや、当時の記憶を思い出す限りだと一部の親族は気づいた様子にも見えたが……。 面倒事に関わるのは御免とばかりに、黙殺された。……頭首のお魎や、私たちの両親の不興を買うのを恐れたためかもしれない。 その結果、「魅音」は魅音となり……私は「詩音」として以降の園崎家での生活を送ることになったのだ……。 詩音(魅音変装制服): (彼らにとって、頭首になるのはどちらでも良かったのか……?いや、そもそも区別ができていたのか……?!) 幼心において、大人たちへの不信感の萌芽となったのは……あるいはその時かもしれない。 そう、私にとって周囲の人間は、ほとんどが敵同然。少なくとも味方とみなせるものはいなかった。 ただひとり……同じ悲哀を味わい、血を分けた姉妹である「魅音」を除いて……。 詩音(魅音変装制服): 『……いい、「魅音」?私は、「詩音」を頑張る。だからあなたも、これからは「魅音」を頑張って』 魅音: 『っ……で、でも、私は……っ』 詩音(魅音変装制服): 『悔しいけど、大人たちは私たちのことをどっちでもいいって思っている……でなきゃ、違うって言った時に止めてくれたはず』 詩音(魅音変装制服): 『なのにあいつらは、あれだけ「魅音」が嫌がっているのに何もしなかった。どれだけ言っても、聞こうとしなかった……!』 魅音: 『……っ……』 詩音(魅音変装制服): 『クソったれな連中なんて、信じるな。信じられるのは私とあんた、2人だけ……だからお互いに助け合って、頑張ろう』 魅音: 『うん、わかった。私……ちゃんとやるね、お姉ちゃ――』 詩音(魅音変装制服): 『……姉はあんたで、私は妹だよ。今後も忘れちゃダメだよ、お姉……』 今となってはかなり色あせた記憶なので、若干の変化や齟齬があるかもしれないが……あの時の決断を、私は後悔していない。 いや、少なくとも1年前までは全くと言っていいほど、過去のそんなやり取りを思い出すことさえ無くなっていたのだ。 …………。 ルチーアを脱走して#p雛見沢#sひなみざわ#rに戻り、北条悟史くんと出会うまでは……。 詩音(魅音変装制服): ……どうなんだろう。もし魅音の言った通りにここで「魅音」として暮らしていたら、私は悟史くんのことを好きになっていたかな……? 私にとっては「かもしれない」未来を妄想する際に、それが1番大事で……必要不可欠な要素だった。 詩音(魅音変装制服): (私は、1年前に聖ルチーア学園を脱走して雛見沢に戻ってきた。その時に悟史くんと出会い、そして好きになった……でも……) 「魅音」として幼い頃から雛見沢で暮らしていれば、彼のことはダム戦争の頃から知っていたと思う。 なにしろ、ダム建設賛成派だった北条夫妻の息子で……雛見沢御三家に真っ向から逆らう勢力に属する者だ。だとしたら、悟史くんの存在を意識しないわけがない。 しかも同じ雛見沢分校通いであれば、嫌でも顔を合わせることになる。無視しようとしても、確実に視界に入ってくるだろう。 詩音(魅音変装制服): (だからあるいは、ひょっとしたら……園崎家の次期頭首として目障りにさえ思えて、憎悪を抱くような相手になっていたかもしれない) もし、そんな事態になっていれば……最悪だ。私のことだから北条兄妹を徹底的に仲間外れにして、いじめの限りを尽くしていた可能性も考えられる。 そして、心身ともに疲れ切った悟史くんは悪しき雛見沢の象徴として、私に憎悪の視線を向けるように……。 詩音(魅音変装制服): ……っ……。 想像するだけでも恐ろしい光景を打ち消すべく、私は枕の上で首を激しく振って……深呼吸する。 ……大丈夫だ、そんなことはない。たとえ出会い方が変わったところで、きっと私は悟史くんのことを好きになると思う。 そして、周囲が敵だらけの彼を救うべくあらゆる権力を使って……走り回るのだ。 詩音(魅音変装制服): (大丈夫……私はどんな時でも、悟史くんの味方だ。彼のためなら何でもできる……きっと……) #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: おっはよー、悟史! 今日も元気かい~? 悟史: あ、おはよう魅音。僕は一応、今日も元気だよ。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: あっはっはっはっ、そいつぁなにより!ところで悟史、今週末って確か#p興宮#sおきのみや#rタイタンズと試合があるんだよね。私、見に行ってもいい? 悟史: えっ? う、うん……もちろんいいけどどういう風の吹き回し? 魅音って確か、少年野球に興味がなかったはずだと思うんだけど。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: 違う違う、野球自体は好きだよ!私が嫌だって言ったのは、マネージャーをやれって頼まれたことに対してだから! 悟史: な、なんだ、そうだったんだ……。もし魅音が野球なんて嫌い、って言ったらがっくり絶望しちゃうところだったよ。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: っ……?な、なんで私が野球嫌いだったら悟史が絶望なんてするのさ? 悟史: あ……あれっ?僕今なにか、変なことでも言ったかい? #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: いや、聞いているのは私なんだけど。……で、どうして? 悟史: …………。 悟史: えっと、どうしてなんだろう? #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: いや、そこで尋ね返す?まったく悟史は、まだまだお子ちゃまだねぇ~。くっくっくっ……! 悟史: ……むぅ。魅音と僕は同い年なんだから、そんな風にお姉さんぶらないでよね。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: 年は同じでも、人生経験の差ってやつだよ。……さて、そろそろいかないと遅刻しちゃうね。ほら悟史、行くよー! 悟史: うん、わかった……って、わわっ?な、なんで腕を組んでくるんだよ~っ? #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: 今日の気分とノリってやつ?どうしても嫌なら離れるけど……どうなの、悟史? 悟史: い、嫌じゃないけど……その、周りの人の目が気になるっていうか……。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: あ、そうなんだ。じゃあもっと見せつけてやろうかね~うりうりっ♪ 悟史: ちょっ……や、やめてよ魅音!そんなふうにひっつかれたら、歩きにくいって! #p園崎魅音#sそのざきみおん#r: あっはっはっはっ……! …………。 そうだ。誰がなんと言おうと、関係ない。北条悟史は、この私が守ってみせる。 たとえ園崎家の持てる全てを使ってでも、絶対に彼のことを……私は……ッ! Part 03: 魅音(白装束): ……そんな夢を、私は見たんだ。みっともない言い逃れをしているだけだって、あんたは呆れて信じないかもしれないけどね……。 詩音(私服): …………。 魅音(白装束): うまくいくと思ったんだよ……最初はさ。実際、悟史……悟史くんの叔母殺しは止められなかったけど、死体をごまかすことはできた。 魅音(白装束): でもさ……その後しばらくして、悟史くんはいなくなった。まるで煙でも消えるようにして、忽然と……っ! 詩音(私服): お姉……いえ、「詩音」……。 魅音(白装束): だから、私は探した! 調べまくった!悟史くんはいったいどこに行ったのか!誰が裏で糸を引いていたのかを、この1年の間ずっと! 魅音(白装束): だけど……突き止められなかった……!園崎家の頭首代行の権限と情報網をもってしても、なんにもわからなかった! 魅音(白装束): いったいなんなんだよ、『オヤシロさまの#p祟#sたた#rり』ってのはさ!御三家が村の結束に使った方便とかじゃなかったのか?! 魅音(白装束): だから……だから私は、こうするしか……こんな手段しか、思いつかなくて……っ……! 詩音(私服): ……それで、御三家の頭首たちから隠していることを聞き出そうとしたんですね。そして……「あの場所」に、みんなを……。 やるせない思いでため息をつきながら、私は「詩音」に付き従って屋敷を移動し……隠された入口から地下へと降り立つ。 洞窟をくり抜いた広い部屋に充満するのは、肉が腐ったような不快なにおい。……それが何なのか、説明を受けるまでもない。 そして、奥に見える「牢」の向こうには古井戸があり……底が見えないほどに深いとかつて聞いたことがあった。 その底には、公由喜一郎と婆っちゃ……園崎お魎の亡骸が放り込まれているのだろう。 梨花ちゃんの消息については、警察から聞き出した情報だと今のところ行方不明とのことだったが……。 この「詩音」の口ぶりからして、すでに殺され……2人と同じ場所にいることが容易に推察できた。 詩音(私服): ……ごめんなさい。私がルチーアを抜け出して#p雛見沢#sひなみざわ#rに戻っていれば、こんな事態になる前に力を貸すことができたかもしれません。 詩音(私服): お互いが本来の立場に戻れば、私がいると「詩音」の邪魔になると思ったから……。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): っ? ということは、詩音……じゃなくて「お姉」も、あの時の記憶を……?! #p園崎詩音#sそのざきしおん#r(#p魅音#sみおん#r): はい。……って、ややこしくなるからもう元の口調に戻したほうがいいね。 #p園崎詩音#sそのざきしおん#r(#p魅音#sみおん#r): 私も……あんたと同じように、前の「記憶」があるんだ。あんたが「詩音」で、私が「魅音」だった頃のね。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): ……えっ……? #p園崎詩音#sそのざきしおん#r(#p魅音#sみおん#r): 私はね……「詩音」。以前の「記憶」でも言ったように、あんたが園崎家の頭首の方が全て丸く収まると思っていたんだ。 #p園崎詩音#sそのざきしおん#r(#p魅音#sみおん#r): 決断力と実行力は、私よりあんたの方が上……それになにより、悟史のことを助けたい、って強い想いを持っている。 #p園崎詩音#sそのざきしおん#r(#p魅音#sみおん#r): だから、あんたに頭首としての権限があれば悟史が「失踪」するきっかけになった祟りを未然に防いでくれるはず……。 #p園崎詩音#sそのざきしおん#r(#p魅音#sみおん#r): そう思って私は、あえて知らないふりを決め込んで……ルチーアにとどまることを選んだんだよ。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): …………。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): くくっ、くっくっくっ……あっはっはっはっ……! #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): なんだ……結局、そうなんですか。お姉も私と、同じだったんですね。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): 正直私は、あんただけ騒動の渦中から逃れてのんびり平和に過ごしやがって……と、密かに恨んでいたりもしていたんですが。 #p園崎詩音#sそのざきしおん#r(#p魅音#sみおん#r): 「詩音」……っ……。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): はぁ……そのことをわかっていれば、あんたと相談していればよかったですね。だったらもう少し、マシな展開に……。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): いや……だめか。結局私の失敗は、誰も彼もを疑ったことです。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): だから、お姉が雛見沢に戻ってきたとしても結局同じことでしょう。むしろあんたも敵として、あっさり殺しちゃっていたでしょう。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): そう……何も信じられなかったからこんなことになった。愚か者の末路が、今の状況ってやつですよ。 #p園崎詩音#sそのざきしおん#r(#p魅音#sみおん#r): ……。そこまでわかっているならここで終わりにしよう、「詩音」。自首して、何もかもを警察に話すんだ。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): ……終わる? 自首?くすくす……冗談じゃありませんよ。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): 私はもう、地獄行きだってことは覚悟しています。だけど……いえ、だからこそ知りたいんです。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): 悟史くんはどうなって……そして、これまでの『オヤシロさまの祟り』の正体は何だったのか。それを知らないままで、終わることなんてできません。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): どうしても終わらせたいと言うなら……お姉。あんたが力づくで、私のことを止めるしかないです。 #p園崎詩音#sそのざきしおん#r(#p魅音#sみおん#r): ……逃げられないよ、「詩音」。この地下牢の出入口は、全て警察が封鎖している。もちろん、その古井戸からのものもね。 #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): くっくっくっ……さすがはお姉、用意周到です。……ですが、ひとつだけ忘れていませんか?私たちだけができた、奇跡のような逃れ方が……! #p園崎詩音#sそのざきしおん#r(#p魅音#sみおん#r): っ? あんた、まさか……?!その古井戸から離れろ、詩音ッ!! #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): くすくすくす……あーっはっはっはっはっ!!! #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): あんたに私は止められない!ひとつを手に入れるために全てを捨てる覚悟も勇気もない、臆病者の「魅音」にはねッッ!! #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): 私はここで死ぬ……この「世界」を捨てる!!そして、次の「世界」で必ず想いを成し遂げる!! #p園崎魅音#sそのざきみおん#r(#p詩音#sしおん#r): あんたはその間抜けヅラを晒して、私の生き様をただ黙って見ていればいいんだ!!あーっはっはっはっはっはっはっ!!! #p園崎詩音#sそのざきしおん#r(#p魅音#sみおん#r): 詩音んんっっっ!!! #p園崎詩音#sそのざきしおん#r(#p魅音#sみおん#r): …………。 #p園崎詩音#sそのざきしおん#r(#p魅音#sみおん#r): 逃しはしないよ……詩音……! #p園崎詩音#sそのざきしおん#r(#p魅音#sみおん#r): あんたの罪……そして過ちは、絶対に私が償わせてやるからッ……! 詩音(私服): ……はっ……?! 詩音(私服): あ……あれ、ここは……? 魅音(私服): あ、やっと起きたねー。おはよう、昨夜はよく眠れた? 詩音(私服): あ、はい……おはようございます。えっと、お姉……? 魅音(私服): ん? どうしたの、詩音? 詩音(私服): あ、いえ……なんでもないです。 魅音(私服): あっはっはっはっ、まだ寝ぼけているみたいだねー。朝食の準備をしておくから、先に顔を洗ってきなよ。 詩音(私服): え、えぇ……そうさせてもらいますね。 …………。 魅音(私服): …………。