Part 01: レナ(私服): うん……お夕飯の食材は、これで全部だね。菜央ちゃんの方はどうかな、かな? 菜央(私服): あたしも、明日の朝食分も入れて終わったわ。#p興宮#sおきのみや#rのスーパーは、品揃えが豊富ね……んしょっ。 レナ(私服): あ、菜央ちゃん。そっちのお米はレナのかごに入れて。全部入れると、持ちきれないと思うから。 菜央(私服): ……ごめんね、レナちゃん。買い物に付き合ってくれただけでも面倒をかけてるのに、荷物持ちまで手伝ってもらっちゃって。 レナ(私服): あはははは、気にしないで。元々買い物はひとりでも行くつもりだったから、こうやってお話をしながらの方が楽しいよ♪ 菜央(私服): ありがとう、レナちゃん……。また近いうちに、一緒にお買い物をしてもらっていい? レナ(私服): もちろんっ。近いうちに、じゃなくて明日も明後日も一緒に回ったりするのはどうかな、かな? 菜央(私服): ほわぁ……なんなのその、天国あるいは極楽浄土はっ?レナちゃんと一緒だったら、365日ずっとお買い物でも最高に楽しくて幸せよ……! レナ(私服): はぅ~、レナだって嬉しいよ。あっ、そういえばもうすぐ……はぅ? 菜央(私服): ? どうしたのレナちゃん、急に立ち止まって。 レナ(私服): ……あそこにいるのって、圭一くん? 圭一(私服): …………。 菜央(私服): 何をしてるのかしら……。お菓子売り場でじっと佇んだまま、動かないなんて。 圭一(私服): はぁ……やっぱり、結構な値段だよなー。こんなことなら、もっと普段から貯金をしておけばよかったぜ……。 圭一(私服): どれも地味なのに、割高感があって……。かといって、ショボイのでお茶を濁すのは男の沽券に関わるし……うーん……。 圭一(私服): みんなに納得してもらおうにも、予算が……くそっ、どうすりゃいいんだ……?! レナ(私服): どうしたの、圭一くん? 圭一(私服): おわっ……れ、レナ?それに菜央ちゃんまで、なんで……?! 菜央(私服): なんで、って……さっきからずっとそこで動かないから、何か買いたいものがあるのか気になって声をかけただけよ。 レナ(私服): 何か探しているのかな、かな……? 菜央(私服): あら? このコーナーって……。 圭一(私服): ……まずいところを見られちまったな。 菜央(私服): なるほど、ホワイトデーのお菓子を探してたのね。 圭一(私服): 先月、みんなからたくさんチョコを貰ったからな。レナも菜央ちゃんもくれただろ? レナ(私服): はぅ……ありがとう、圭一くん。その気持ちはとっても嬉しいけど、えっと……。 菜央(私服): あたしたち全員分となると、結構な負担になると思うんだけど……大丈夫? レナ(私服): うん。それに、興宮の学校でも貰っていたらすごい出費になっちゃうんじゃないかな、かな……? 圭一(私服): いや、その点については問題ない。貰ったのは、#p雛見沢#sひなみざわ#rのみんなからだけだからさ。 レナ(私服): あ、そうなんだ……はぅ。 菜央(私服): と言っても、ひのふのみ……部活メンバー全部で、9人もいるじゃない。 圭一(私服): あぁ、たくさん貰った……そのことについては感謝しかしていない。本気で、めちゃくちゃ嬉しかった! 圭一(私服): だが……自慢にもならねぇが、チョコを貰ったら何を返せばいいのかよくわかんねぇから、迷っちまってさ。 圭一(私服): それ向けのお菓子を下見しようと店に来てみたんだが、正直言って小遣いと貯金で足りるかどうか……。 菜央(私服): もっと気軽に考えてくれていいのよ。少なくともあたしは、仲のいい先輩に対してのほんの感謝の気持ちで渡しただけなんだから。 レナ(私服): うん。レナも圭一くんが、仲良しの大切なお友達だと思って渡したつもりだよ。もちろん魅ぃちゃんや、沙都子ちゃんたちもね。 レナ(私服): だから全員まとめてでも、誰も気にしないと思う。もしお返しをしてくれるのなら、たくさん入ったお菓子の大袋なんてどうかな、かな? 圭一(私服): いや、それじゃ俺の気がすまねぇんだよ。なにしろ今年は、その……レナたちにも色々と迷惑をかけちまったからさ。 菜央(私服): あれは別に気にしなくてもいい、って何度も言ったじゃない。前原さんが悪いだなんてあたしたち、誰も思っちゃいないんだから。 レナ(私服): はぅ……菜央ちゃんの言う通りだよ。そこまで責任を感じないでいてくれたほうがレナたちも嬉しいかな……かな。 圭一(私服): ありがとうな、レナ。それに、菜央ちゃんも。俺も、わかっちゃいるんだが……その……。 圭一(私服): やっぱり、自分の中で決着をつけるためにもホワイトデーはちゃんと全員に返したいんだ! 圭一(私服): でも予算が、予算が……! 菜央(私服): わかるわ。気持ちに予算がついてこない、って現実を直視するのは大変よね。 圭一(私服): くそっ……最終手段『KOZUKAIのMAEGARI』だけは、男のプライドとして使いたくなかったんだが……! レナ(私服): ……ありがとう、圭一くん。そこまで悩んでくれて、嬉しいよ。 圭一(私服): レナ……。 レナ(私服): どんな形でもお返しをしてくれたら、魅ぃちゃんたちもみんな喜ぶと思うよ。……でも、圭一くんは納得できないんだよね? 圭一(私服): あぁ……全員ちゃんとしたチョコをくれたからな。お返しがショボイのは、ちょっと……。 菜央(私服): ……仕方ないわね。協力してあげるわ。 圭一(私服): えっ、協力って……? 菜央(私服): 要するに、一番の問題は予算なんでしょ?なまじ無理して市販品を買おうとするから、お金がかかっちゃうのよ。 レナ(私服): あははは、そっか。9人もいるからこその、解決法だねっ。 圭一(私服): ……ど、どういうことだ? レナ(私服): はぅ、それはね……。 Part 02: 美雪(私服): んー、それで前原くんの手作り菓子ってわけか。確かに手作りの強みは、原価さえ工夫をすれば大量に作るのも可能になることだからね。 美雪(私服): で、それを作るにあたっての指南役とサポート役をレナと菜央が担当して……さらにここの台所を使うってわけか。 レナ(私服): はぅ……お邪魔させてもらうね。 圭一(私服): 悪いな。親にバレンタイン関係のことは、あまり知られたくなくてさ……。 美雪(私服): わかるわかる。親と仲がよくても……というか、仲がいいから相談しにくいことってよくあるしさ。 レナ(私服): あと……美雪ちゃんと、一穂ちゃん。魅ぃちゃんたちにも、このことは内緒にしてね。 一穂(私服): そっか、サプライズでみんなに……うん! 私も頑張ってお手伝いするよ! 美雪(私服): 一穂……意気込みはとても素晴らしいけど、キミは料理だと足手まといというかハンデにしかならないと思うから、気持ちだけにしておこう。 一穂(私服): あ、あぅ……。 美雪(私服): ただ、私としては前原くんの料理の腕も心配っていえば心配なんだよねー。確か以前、台所を火の海にしかけたことがあったんでしょ? 圭一(私服): え……? レナ(私服): 圭一くん……そんなことがあったの? 圭一(私服): ……なっ、なななっ! ど、どうしてそのことを?!沙都子には固く口止めしておいたはずなのに……! 美雪(私服): んー、まぁ沙都子に口止めなんて、鉄砲水に向かって下敷きで流れをせき止めようとするようなもんでしょ。 一穂(私服): さ、さすがにそれは沙都子ちゃんに対してちょっと失礼なんじゃ……? 美雪(私服): じゃあ一穂、もしキミが誰にも言えなかった秘密を打ち明けるとして……沙都子を相手に選ぶ? 一穂(私服): …………。 美雪(私服): でしょ? 菜央(私服): 止めなさい、美雪。時間がないんだから、無駄話はその辺で。 美雪(私服): はいはい……それで、何を作るの? 圭一(私服): 菜央ちゃんに教わった、新感覚のお菓子だ!東京育ちの美雪ちゃんも、食べたことはないだろうな~。 美雪(私服): おぅ、そりゃ楽しみ……で、菜央はさっきから何をバタバタしてるのさ。お菓子作りの準備なら、布とかは必要ないでしょ? 菜央(私服): お菓子だけじゃ足りないところを、別の方法で補うための準備よ。 圭一(私服): えっ……? 一穂(私服): 前原くん、驚いてるけど……聞いてないの? 圭一(私服): あ、あぁ……聞いてない……。 レナ(私服): あははは。せっかくだから圭一くんもビックリさせようと思ってね……はぅはぅ♪ 圭一(私服): おいおい、俺がサプライズされてどうするんだよ?!……って、本当に何をするつもりなんだ? 菜央(私服): 内緒よ。ただお菓子作りと並行してやるから、手際よく進めないとね。 圭一(私服): だから、やるって結局何を……? 菜央(私服): ふふっ……当日を楽しみにしてて♪ 圭一(私服): 気になるだろぉぉぉおおぉっっ?! Part 03: 魅音(私服): ちょっと美雪、そろそろ教えてよ。いきなり呼び出してどうしたの?それに、他のみんなも集めてさ。 美雪(私服): あー、今日みんなを呼んだのは前原くんなんだよね。というわけで主役さん、どうぞ前へ。 圭一(私服): いや……ほら、今日はホワイトデーだろ?で、先月貰ったチョコのお返しをしようと思ってさ。 魅音(私服): お返しって……まさか、全員分っ?いや、気持ちはありがたいけどさ……。 梨花(私服): みー。一穂たちも込みで全員となると9人分なので、とんでもない量になったはずなのですよ。 沙都子(私服): そこまで無理をしていただかなくても、結構でしたのに……変なところで律儀というか義理堅い方ですわね、圭一さんは。 羽入(私服): あぅあぅ~、僕は甘いものが食べられるのならなんでも大歓迎ですよ~。 詩音(私服): まぁ、どんなお返しなのかはこれから拝見するとしても私たち全員分を揃えた覚悟とやらは、褒めてあげますよ。……で、どんなものを用意してくれたんです? 圭一(私服): あぁ……レナと菜央ちゃんにも手伝ってもらって、こいつを作ってみたんだ……そらっ! 魅音(私服): ん?ぱっと見だと、クッキーサンド……みたいに見えるね。でもなんか、ちょっと違うというか……? 沙都子(私服): あら……! 圭一さんのお手製とは信じがたいほどに、とてもカラフルで可愛らしいですわ~! 梨花(私服): みー! 宝石みたいに綺麗なのですよ~。 圭一(私服): もちろん、見栄えだけじゃねぇぜ!味もだまされたと思って、ぜひ試してみてくれ。 詩音(私服): では、早速いただきますね。はむっ……んんっ? こ、これは……?! 沙都子(私服): な、なんですのこれは……っ?こんなお菓子は今まで見たことも聞いたことも、もちろん食べたこともありませんわ~?! 羽入(私服): あぅあぅあぅ~! 甘くてさっくりとした食感とほろっと柔かい口溶けがたまらないのですよ~♪ 梨花(私服): ビスケットやクッキーとも違うのです。いったい、これは……? 菜央(私服): 驚いた? これは卵白をメレンゲ状にした上で、アーモンドの粉を混ぜて練ったものを焼いた……『マカロン』ってお菓子なのよ。 梨花(私服): みー、まかろん……? 魅音(私服): なるほど、圭ちゃんにしては妙に可愛くてまともなお菓子が出てきたと思ったら菜央ちゃんがバックについていたんだね。 魅音(私服): いやー……でも、こんなお菓子を食べるのっておじさんは初めてだから、すっごく嬉しいよ! 圭一(私服): へへっ、だろー? ほんと菜央ちゃんって、いろんなお菓子を知っているよなぁ! 菜央(私服): あたしはレシピを教えただけで、凄いのは前原さんよ。これって一流のパティシエが挑戦するようなお菓子で、壊れやすいから完成させるのがすっごく難しいのよ。 圭一(私服): そうなんだ?へへっ、俺もやればできるってわけだ! 菜央(私服): ただ、ちょっとピエの出が甘いわね。もうちょっとしっかり出したかったけど……出過ぎて空洞化するよりはマシってことで。 圭一(私服): うっ?! 持ちあげて落とすスタイル……?! 梨花(私服): みー……マカロンは甘いですが、菜央のコメントは辛口なのですよ。 詩音(私服): なるほど、しっかり厳しく教えられたわけですか。 レナ(私服): 圭一くん、すっごく頑張っていたんだよ。もう片方のサプライズは間に合わなかったけど……。 魅音(私服): もう片方の、サプライズ……? 菜央(私服): このマカロン、2つずつくらいしかないでしょ?だから量を補うために、前原さんが心を込めたメッセージとともに渡す作戦だったのよ。 羽入(私服): あぅあぅ? どういうことなのですか? 美雪(私服): あー……実はお菓子の制作中に、こういうことがあって……。 菜央(私服): あとはしっかり、乾燥させてから焼くの。そうすると表面がつるつるになるのよ。 圭一(私服): なるほど……あれ? レナはどこに行った? 菜央(私服): レナちゃんには、ちょっとした衣装に着替えて貰うことにしたのよ。……それじゃレナちゃん、登場して頂戴♪ レナの声: は、はぅ……えっと……。 レナ(私服): ……やぁ、圭一くん。こほん……この衣装、似合うかい? 圭一(私服): って、レナ……?なんで男の格好なんかしているんだ?! レナ(私服): ホワイトデーは、バレンタインとは逆に男の人がプレゼントを渡すものだけど……。 レナ(私服): 女の子は、渡す時のシチュエーションが大事だったりするんだよ。 圭一(私服): 渡す時の、シチュエーション……?えっ、えっ、どういうことだ? 菜央(私服): つまり前原さんは、レナちゃん先生からホワイトデーにみんなにマカロンを渡す時の台詞、態度、空気感の作り方……。 菜央(私服): 全てを教わって、実践するのよ! レナ(私服): 量が足りない分を気持ちで補うために……頑張ろうね、圭一くんっ。 レナ(私服): さぁ、まずは定番のありがとうの伝え方から……。 圭一(私服): なっ、なっ、なななっ……?! 菜央(私服): というわけで、レナちゃんが男役を演じて前原さんが渡される女の子役として猛練習したのよ。 レナ(燕尾服): はぅ……これが、その時の服だよ。 沙都子(私服): えっ……? まさか、練習のためだけにわざわざその衣装を作ったんですの? 菜央(私服): ? 当然じゃない。 詩音(私服): あー……なんかもう突っ込むのも野暮なので流しますが、とりあえず結果だけ聞きますね。……練習して、どうなったんです? 美雪(私服): 男役のレナに散々甘い言葉でささやかれて、「俺がみんなにこれをやるのかー?!」と恥ずかしくなったみたいで、早々にギブ。 一穂(私服): 真っ赤になって、床にゴロゴロしてたね……。 圭一(私服): うぅ……お、恐ろしい……恐ろしい可能性を見てしまった……! 圭一(私服): 俺はあの時、レナが女の子で心底よかったと思ったぜ……! 羽入(私服): あぅあぅ……レナが男だったら、どうなっていたんですか? 圭一(私服): レナを巡って、女の子同士で殺し合ってもおかしくないと思った……! 魅音(私服): そ、そこまで……?! レナ(燕尾服): はぅ……練習の参考資料がよくなかったのかな、かな? 梨花(私服): みー、何を参考にしたのですか? レナ(燕尾服): えっと……少女漫画を何冊かと、ティーン向けの小説と……。 沙都子(私服): あの……レナさん。そこで登場するようなオシャレ主人公の言動なんて、圭一さんには最初っから無理なお話だと思いますわ。 圭一(私服): うぐっ?! 魅音(私服): あっはっはっはっ、確かに!もし圭ちゃんにそんなことをされたら、おじさんも鳥肌立っちゃうよ! 魅音(私服): にしても、レナって男の子の格好も似合うんだね~。女の子だけの歌劇団の人みたい! レナ(燕尾服): はぅ~ありがとう、魅ぃちゃん。 詩音(私服): にしても、マカロンっておいしいですけど喉が渇きますね。……お茶のおかわり貰えます? 美雪(私服): じゃあ淹れてくるよ。 梨花(私服): みー……それに甘いものを食べたので、何かしょっぱいものが欲しくなってきたのです。 沙都子(私服): もう、梨花ったらおじさんみたいなことを……。 レナ(燕尾服): 圭一くん。お菓子、みんなに喜んでもらえてよかったね。 圭一(私服): そうだな……ほら、レナの分のマカロン。 レナ(燕尾服): えっ? これ、お母さんにあげるって大事にとっておいた……一番綺麗にできたものじゃなかったのかな、かな? 圭一(私服): あれは口実。レナ用にとっておいたんだよ。 圭一(私服): ありがとな。あの時、あの店でレナに会えて本当に助かった。 圭一(私服): ……あと、レナが女の子でよかった。 レナ(燕尾服): …………。 レナ(燕尾服): ……あはははっ。 圭一(私服): なんだよ、急に笑い出して。 レナ(燕尾服): うん……うんっ。レナも女の子でよかったよ! レナ(燕尾服): けど、女の子の役で真っ赤になった圭一くん、見ていて楽しかったよ~はぅっ♪ レナ(燕尾服): ねぇ圭一くん、来年に備えてまた特訓しようよ。今度はレナもしっかりと勉強して、もっとちゃんと教えられるようになるから! ねっ? 圭一(私服): ……感謝はしている!感謝はしているが、それだけは勘弁してくれ~!