Part 01: 千紗登: (……こうして夏美の方から呼び出されたのは、久しぶりどころか初めてかな) なんてことを思いながら、私はちらっ、と隣に立つ幼なじみ、牧村珠子に目を向けた。 珠子: …………。 目が合うなり彼女は小首をかしげながら、肩をすくめてみせる。……不機嫌そうに見えるのは、まだ少しわだかまりが残っているのかもしれない。 千紗登: (まぁ……最近の夏美って何につけても暁が優先で、私たちが話しかけても相手するのも面倒って感じに付き合ってくれなくなったもんね) 私と珠子にとっての幼なじみの男子……藤堂暁から告白されて夏美が交際を始めたのは、ほんの数ヶ月前のこと。 その報告を恥ずかしそうに、でも嬉しそうに彼女から聞かされた時は私も珠子も心から祝福したものだ。 千紗登: 『しっかりやりなよ~!あいつって言葉足らずで不器用なヘタレだけど、基本的にはいいやつだからさ!』 珠子: 『こらっ、千紗登!せっかく夏美の長年の想いが通じたってのに、そんな言い方で水を差すんじゃない!』 夏美(高校生): 『な、長年って……私、藤堂くんと出会ってからまだ1年も経っていないんだけど……』 千紗登: 『あははっ。それくらいに私たちは、あんたと暁の仲の進展をやきもきしながら見守っていたってことだよ』 珠子: 『本当に良かったね、夏美。これからも2人が仲良く過ごせるよう、私も千紗登も祈っているから……』 夏美(高校生): 『っ……ありがとう、珠子ちゃん。千紗登ちゃんも……本当に……』 そんな感じに、私たちが2人の幸せを願っていたのは嘘でもお世辞でもなく本心からの真摯な思いだった。だけど……。 千紗登: (……それから間もなく、夏美は変わってしまった。クラスメイトの陰口が、私たちの耳に届くくらいに) とにかく夏美は、暁と一緒にいようとした。昼休みや放課後……選択授業の移動時間も。 それだけなら、まだいい。……問題なのは、周囲に対して「私たちは交際している」というアピールをあからさまに見せつけることだった。 クラスメイトA: 『あいつ、なんか調子乗っているんじゃない?』 クラスメイトB: 『藤堂くんにいっつもベタベタしてさ……はっきり言って目障りなんだよねー』 そんな声を聞いたのは、一度や二度じゃない。私と珠子は最初のうちこそ本人たちに注意したり、にらみつけたりもしてやったものだが……。 夏美の行動はますますエスカレートして、最近では私たちでさえ、さすがに目に余るのではと感じるようになってきていた……。 千紗登: (もちろん、想いが通じて浮かれたくなる気持ちはよくわかるし……そもそも交際経験のない私たちが偉そうに口を挟むのは、おこがましいかもしれない) ただ……学校は大勢の人が集まる「社会」であり、それぞれに価値観があって独自の許容範囲がある。 だから、自分の行いが不快だと思われないようきちんと配慮しておかなければ、そこに軋轢や誤解が生まれる原因となってしまう。 要するに、悪目立ちするということだ。だから私と珠子は、それとなく本人に言葉を選びながら伝えていた……のだけど。 そんな苦言でさえ耳にも入れたくなかったのか、夏美は徐々に私たちからも距離を置き始めた……。 千紗登: (まぁ……いつか痛い目を見た時に、フォローしてあげればいいかな……) なんてことを思いながら悠長に構えていた矢先に、今日の呼び出しだ。 ……正直言って、気乗りはしなかった。珠子なんて最後まで渋っていたので、連れてくるのにずいぶん苦労させられた……。 千紗登: で……夏美。今日は私たちを呼び出して、何かあったの? 夏美(高校生): う……うん。実はこの前、暁くんと絵の課題のことで話をしたんだけど……。 そらきた。またのろけ話を聞かされるか、あるいは暁の趣向について色々聞かれるのだろうか。 そう思って、内心ウンザリした気分で珠子と目配せを交わしてから耳を傾けたのだけど……。 なぜか浮かれるどころか神妙な表情の夏美が打ち明けてきた内容は、予想していたのとはちょっと違っていた。 千紗登: ……なるほど。美術部の顧問の先生から出された暁の課題が、「地方の村祭りの風景」で……。 千紗登: そのモチーフとして暁が持ってきた場所が、夏美が前に住んでいた#p雛見沢#sひなみざわ#rだったってわけか。……そんな偶然が、本当にあるんだねぇ。 夏美(高校生): ……うん。雛見沢って村の中にバスが走っていないから、不便だよって言ったんだけど……。 夏美(高校生): 暁くん……村を一望できる高台からの景色がすごく気に入ったみたいで……できれば私に案内をしてほしい、って。 千紗登: ほー、それは結構なことじゃない。日帰りか一泊かはともかく、旅行デートってのもオツなもんだと思うよ。 夏美(高校生): …………。 千紗登: ……夏美? 夏美(高校生): その話……おかーさんとおとーさんにしたの。徒歩で画材を持って村を移動するのは大変だから、車を出してもらえないかな……って。 夏美(高校生): そしたら、すごく怒られて……年頃の女の子が男の子を連れ回して歩くなんてはしたない真似をするんじゃない――。 夏美(高校生): まして、そんなことに手を貸したら親公認と思われてしまうじゃないか……って。 珠子: あー……そういえば夏美のところの親御さんって、そういうところが厳しいって話だったわね。 千紗登: つまりご両親は、夏美たちの交際をあまり良く思っていないってこと?さすがにそれは、過干渉じゃないかなぁ。 夏美(高校生): うん。だから、暁くんのことはもっと話し合って2人にちゃんとわかってもらおうと思っているよ。けど……。 夏美(高校生): 私、そんなに……おかーさんやおとーさんに怒られるようなことをしていたのかな……って。 夏美(高校生): 嬉しくて、浮かれて、舞い上がっていたけど……私にはまだ……早かったのかな……。 千紗登: …………。 それを聞いて私と珠子は、顔を見合わせてなんだかなぁ、とお互いにため息をつく。 いかがわしい場所に行くのならまだしも、地元を連れだって歩くことに違和感などはない。むしろ意識するほうが過剰だし、異常だ。 だから……「それくらいのことは大目に見てやれよ」というのが、私の正直な感想だった。 千紗登: まぁ……今回は見送ったほうがよさそうだね。暁にそういった事情を話せば、あいつだってきっとわかってくれると思うしさ。 夏美(高校生): うん。そうするしかないと思う……ただ。 夏美(高校生): 暁くんと付き合い始めてから自分が何をしていたのかを振り返って……思い出して……。 夏美(高校生): やっと……気づいたことがあったの。 珠子: ? 何に気づいたの、夏美……? 夏美(高校生): ……千紗登ちゃん、珠子ちゃん。 夏美(高校生): 本当に……ごめんなさい。 そういって夏美は、私たちに向けて深々と頭を下げてきた……。 Part 02: 珠子: ちょ、ちょっと……夏美? 理由もわからずに謝罪された私たちは、唖然とその場に固まってしまった。 千紗登: い、いきなりどうしたのさ……?私も珠子も、あんたに謝られるような覚えは特に思いつかないんだけど……っ? 困惑のまま、思わず私は彼女に駆け寄って何があったのかと尋ねるべく肩に手をかける。 すると夏美は顔を上げ、目に涙をためながらこちらを見返すと……勇気を振り絞るように口を開いていった。 夏美(高校生): 私……暁くんとのことで舞い上がって、周りのものが全然……見えなくなっていた。そのことに、やっと気づいた……。 夏美(高校生): 千紗登ちゃんたちが注意してくれていたのに好き勝手にはしゃいで、浮かれて……。 夏美(高校生): 自分がすごく、周りに……千紗登ちゃんや珠子ちゃん、暁くんに迷惑をかけているって……知らなくて……。 千紗登: ……。あんた、親になんて言われたのさ? ぼろぼろと涙をこぼしている夏美の様子に嫌な予感を覚えた私は、さっきまで彼女と距離を置こうと考えていたことも忘れて……問い質す。 すると彼女はしゃくり上げながら、嗚咽交じりに言葉を繋いでいった。 夏美(高校生): っ……悪い友達と付き合ったせいで、はしたない遊びを覚えるようになったって……。この学校に通わせなきゃ、よかったって……! 千紗登: なっ……?! 夏美(高校生): 転校してきた時……千紗登ちゃんや珠子ちゃんがあんなにも初対面の私のために、色々力を貸して気を遣ってくれていたのに……! 夏美(高校生): 私が……暁くんと付き合ったから、2人のことも……暁くんまで、悪く言われて……!ごめんなさい……ごめんなさい……っ! そして夏美は、ついに我慢できなくなったのかその場に泣き崩れてしまう。 私は、そんな彼女を見つめながら……目眩を覚えるくらいの憤りを覚えていた。 千紗登: (そこまで……そこまで言うかっ?親だからって、言っていいことと悪いことの区別もつかないってのか?!) 他人様の親に向かって無礼だはと自覚しつつも、そう叫びたくなる気持ちを辛うじて抑え込む。 確かに……確かにさっきまでは、私も夏美のこと、調子に乗っていると思って正直なところあまり良い気分ではなかった! ……でも、いいだろうがそれくらいは!ずっと片思いしていた相手が自分を好きだってわかれば、誰だってそうなって当然だ! なのに、そんなふうに浮かれるのはこの町で悪い遊びを覚えたからだとっ?そして私たちが、その元凶だと?! 千紗登: (叱責だか躾だか知らないけど、なんてこと言いやがるんだ……自分の娘にっ!) 裏を返せば、そんな出来の悪い友達とつるむほど夏美は判断力に乏しい子だってことになる。……とんでもない否定の評価で、侮辱の言葉だ。 ひょっとしたらこの子は、これまでずっとそういった価値観を親から押しつけられて育ってきたのかもしれない。 それを思うと、やるせなく……気弱でおどおどとした普段の振る舞いの理由がこれでなんとなく理解できたような気がした……。 千紗登: (酷い話だね……吐き気がする) そう思ってふと顔を横に向けると、隣にいた珠子の表情が視界に映る。 ……彼女もまた、怒りを満面に浮かべていた。もちろんその矛先は、さっきまで不愉快だと思っていた目の前の子でないのは明らかだ。 千紗登: ……夏美。 だから、私は……出会った頃と同じくらいのまっさらな気持ちでしゃがみ込み、嗚咽する夏美と視線を合わせる。 ……わだかまりはもう、なかった。友達を悪く言われたことに怒り、悔しがり……それが自分のせいだと責める、優しい子。 ほんの一瞬だけ、気の緩みから道を外しかけていたかもしれないけど……それさえも今は、愛おしく思える。 あぁ……いいさ。こうなったらとことん、悪い遊びを教える「味方」になってやろうじゃないか。 そう心に決めて私は、おずおずと顔を上げる夏美に対してにこやかに笑いかけていった。 千紗登: なーに言っているのさ、夏美。私たちは迷惑をかけられているなんて、一度も思ったことはないっての。 千紗登: まぁ、最近ちょっち付き合いが悪いから寂しいかなぁー、って思っていたことは否定しないけどさ。 夏美(高校生): っ、ごめんなさい……私……2人が優しくしてくれていたから、許されると思って……甘えて……っ。 珠子: ……大丈夫よ。色々あったけど、夏美はこうしてちゃんと謝ってくれたんだから。 珠子: 悪い遊びを教えたつもりはないけど……そう決めつけてくるんだったら、いいわ。私たちはどう思われたって構わない。 珠子: だって私と千紗登は、夏美のことが好きで一緒にいるんだから……ね? 夏美(高校生): 千紗登ちゃん……珠子ちゃん……。 夏美(高校生): ありがとう……。私、2人が友達でいてくれて、本当に幸せだよ。 千紗登: ……それはお互い様だよ、夏美。 お世辞でもなんでもなく、本心からの思いで素直にその言葉が口をついて出る。 千紗登: (暁……あんたの人を見る目は、確かだったね) なんて称賛の言葉を、私は幼なじみ……そして、恋にもならないほのかな憧憬を抱いていた彼に向けて、そっと伝える。 藤堂暁とは、今時の男子には珍しいくらいに純朴で一途なやつだ。だからこそ美術という分野で感性を活かして、才能を発揮しているのだろうが。 そんな彼が居心地の良さを抱くことのできるお相手となれば……当然似たような女の子ということになる。 つまり、2人の出会いと接近は自然かつ当然の成り行きであり……私としても安堵に満ちた、納得をもって受け入れられる結果だった……。 千紗登: ふむ……こうなったら、意地でも夏美と暁を#p雛見沢#sひなみざわ#rに行かせてやりたくなったね。当てつけってやつでさ。 夏美(高校生): えっ? で、でもそんなことをしたら2人に迷惑が……。 千紗登: 大丈夫、大丈夫。要は親御さんたちが文句をつけない形で事を運べばいいってことなんだからさ。 珠子: ちなみに、その「#p綿流#sわたなが#rし」……?っていうお祭りが開かれるのは、6月のいつ頃なの? 夏美(高校生): えっと……再来週の日曜日、だよ。 千紗登: なるほど、なるほど。……よし! だったらこのちーちゃんが夏美のために一肌脱ごうじゃないか! 夏美(高校生): 一肌脱ぐって……ど、どういうこと? 千紗登: もちろん、言葉通りだよ。……あ、言っておくけど別にヌードモデルをやろうとか、そういうことじゃないからね? 珠子: こら、余計なことを言って話をややこしくしない。……それから千紗登、まさか私を蚊帳の外に置こうって思っていたりしないでしょうね? 千紗登: いやー、タマさんがいると色々と面倒が増えそうだし、ここは遠慮してもらって……。 千紗登: ちょっ、ちょっとタンマ、珠子っ?ほんの軽い冗談なんだから、椅子を振り上げて殺意たっぷりの笑顔になるのは止めてよッ?! 珠子: よろしい。だったら私が、全員のためにとっておきのアイディアを提供してあげるわ。 千紗登: は、ははぁ~……!よろしく、お願いいたしまする……? 夏美(高校生): …………。 夏美(高校生): ……本当にありがとう、2人とも。 Part 03: 千紗登: よーし、着いた着いたー!山科さん、ここまで運転してくれてありがとうございまーす! 山科: ……いえいえ、これくらいはお安い御用です。私も、知らない土地への運転は新しい発見などが色々とあって、なかなか楽しかったですよ。 後部座席のドアを開け、乗っていた私たちが外へと出るのを見届けながら……山科さんはにこやかな笑顔で答えてくれる。 彼は病院の理事長である私の父親の専属運転手を長らく務めてくれている……珠子や暁とも親しい、とても信頼の置ける人だった。 珠子: 本当にありがとうございます、山科さん。ここまで迷わずスムーズにたどり着けて、道中も乗り心地が最高でした……! 山科: ははっ。そう言っていただけると、事前に下調べをしておいた甲斐がありましたよ。 山科: あと……藤堂さん。こちらのお荷物は、ここで下ろしてしまっても本当によろしいのですか? 暁: あ……はい。すべて絵画関係の荷物になりますので、ここから持って歩くつもりです。 山科: そうですか。良い絵ができあがるのを、楽しみにしておりますよ。 暁: ありがとうございます。……すみません、結構な大荷物なのにお手を煩わせてしまいまして。 山科: いえいえ、どうかお気になさらず。私もこの2日間は、バカンスをいただいたつもりで羽根を伸ばさせていただきますので。 千紗登: さすが山科さん、話せる~!ちなみにかかった経費はぜーんぶ、私のお父さんに請求してねー! 暁: ……おい、いいのか?山科さんはチサの親父さんの運転手なのに、勝手に連れ回したりして……。 千紗登: いーのいーの。たまには自分で運転しないとボケるって、ちゃんと釘を刺しておいたからさ~。 珠子: そんなこと言って……またお小遣い減らされて泣きついてきても、私は知らないわよ。 千紗登: はっはっはっはっ!そんな先のことはしーらないっ! 千紗登: ……さーてと。そろそろあの子が、迎えに来てくれることになっていたはずなんだけど……。 千紗登: あっ、いたいた! おーい! 夏美(高校生): 千紗登ちゃん、珠子ちゃん……暁くんも!よかった、本当に来てくれたんだね……! 千紗登: おいおい、夏美さんや。あんたから誘ったくせに、まさか来ないかもって疑っていたわけじゃないだろうね……? 夏美(高校生): そ、そういう意味じゃなくて……!気を悪くしちゃったら、ごめんね。 千紗登: あっはっはっはっ、全然!軽いちーちゃんジョークなんだから、そんなに気にしないでってば! 珠子: なにがちーちゃんジョークよ。あんたの冗談は誤解を招きやすいんだから、時と相手を選びなさい。 暁: ……まったくだ。 千紗登: ええっ?なんと背中に向けてフレンドリーファイアっ!うぅ夏美、あんただけは私の味方だよね~? 夏美(高校生): ふえっ? も、もちろん千紗登ちゃんは私の大切なお友達だと思っているけど……? 千紗登: あぁ、なんてありがたくも愛おしいお言葉!夏美、あんたのためなら私は今すぐにでも女を捨ててもいい! 千紗登: いや、人間辞めても後悔はしないっ!いっそ暁なんか捨てて、私と一緒に最高のハッピーエンドを実現しよ――ほげっ?! 珠子: ……いい加減にしろ、このヘンタイ娘。暁がこの世の終わりを迎えたような顔で固まっているじゃないの。 暁: へ、変な言い方をするなよ、タマっ!俺は別に、チサの冗談を真に受けて驚いたわけじゃ……! 珠子: あら、そうなの?だったらせっかくのこの2日間、夏美の身柄を私たちに明け渡してもいいのね……? 暁: なっ?いや、それは……こ、困る……。 夏美(高校生): ……大丈夫だよ、暁くん。私、この旅行の間はしっかり村の案内を引き受けるつもりだから。 夏美(高校生): だから、描いてみたいイメージがあったら何でも言ってね。それが合いそうな場所に連れていってあげる。 暁: っ……お、おぅ……。よ、よろしく頼み……ます……。 千紗登: はー、残念。夏美に振られちゃったー。というわけでタマさんや、失恋した私たちはどこかでヤケ食いといきましょうかねー。 珠子: はいはい。……ちなみに夏美、どこかこの辺りでおいしい昼食の店ってあったりする? 夏美(高校生): うん、もちろん! 私の知り合いの子がバイトしているファミレスなんだけど、料理もデザートもおいしくて……。 夏美(高校生): ……そろそろ始まるよ、暁くん。こっちに来てくれる? 暁: あぁ。……いいな、この感じ。でも、本当にここで絵を描いていても良いのか? 夏美(高校生): うんっ。ちゃんとお祭りの責任者の人たちから許可ももらっているし、全然問題ないよっ。 暁: そっか。……じゃあ、遠慮なく。 そういって暁くんは、早速カンバスを組み立ててデッサンに入っていく。 ……集中して、自分のイメージの世界に没頭していく姿。それが私の大好きな、藤堂暁くんの姿だった。 夏美(高校生): あっ……? ふと、たくさんの風船人形が置かれている屋台を見つけて……私はそのひとつに、目を留める。 周りにはアニメの色々なキャラクターが所狭しとばかりに飾られていたけど……その子はまるで……私の大好きな……。 夏美(高校生): あの……これ、ください。 ほとんど衝動的に、私はそれを購入する。そして自分の腕に絡め、ふふ、と微笑んでいた……。