Part 01: 田村媛命: ……つい、カッとなってやってしまった#p哉#sかな#r。今は激しく後悔してる#p也#sなり#rや……。 などと、思考の足らぬ下賤の輩が発するような愚痴を呟きながら……吾輩は大きくため息をつく。 思い返してみると、実に拙速な判断だった。どうも「あれ」に関することに意識が向くと、冷静さを失ってしまう傾向がある。 とはいえ、行動に起こしてしまった以上は無為に引き返したり、翻意したりすることなど愚の骨頂だ。なにより吾輩の自尊心が許さぬ。 いずれにしても今は、あのボケn……もとい、考え足らずの阿呆神の所在を突き止め、目にものを見せてやらなければ気が済まない。 そのためにわざわざ、危険を冒してまで吾輩の名代に御子のひとりを据えたのだから――。 一穂(私服): え、えっと……つまり田村媛さまは私に留守番をさせて、その間にオヤシロさまと会って話をしてくるおつもりなんですね……? 田村媛命: #p然#sしか#rり。あやつの乱れ切った所業、振る舞いには吾輩もいい加減堪忍袋の緒が切れたと知り給え。 田村媛命: 幸いにして、この空間の狭間は時の概念から切り離されたところである故、さほど「待つ」という感覚にはならぬ哉。 一穂(私服): そ、そう言われましても……。 目の前にて吾輩と向き合う御子のひとり――カズホはそう言って困惑の表情をあらわにする。 ……毎度のことだが、この娘は3人の御子の中でもひときわ理解と決断が遅い。ミユキやナオであれば、この程度の説明だけで是非を下すというのに。 田村媛命: (もっとも……あの2人だと文句を言ったりそれなりの対価を求めたりすること必定なので、別の面倒が増える也や……) まったく、神に逆らうとは不届きなやつらだ。この地に由来を持つ者であれば、もっと従順に畏敬の念を示すが当然の姿勢であろうに。 田村媛命: (なんで吾輩が脅されたり気を遣ったり、怯えて忖度したりせねばならぬっ?……思い出したらだんだん腹が立ってきた哉) 一穂(私服): あ、あの……田村媛さま? 田村媛命: ……いや、なんでもない哉。しばし考えをまとめていた所以の沈黙、そなたが気にすることではない也や。 一穂(私服): は、はぁ……。 田村媛命: いずれにせよ、そなたらの「世界」にて神威の活と尊厳を守り損なわぬためにも、これは必須のこと哉。 田村媛命: ゆえにそなたはただ吾輩の意向に従い、この場にて暫し過ごすが善きと知り給え。 一穂(私服): わ、わかりました……。 そう言ってカズホは、多少納得のいかない表情をしながらもとりあえず頷いて、了承の意を示す。 この素直さは、実に善きものと思う。他の御子の2人も、こやつの爪の垢でも煎じて毎日飲み続けるがいい。 美雪(私服): ……っ……?! 菜央(私服): どうしたのよ、美雪。急に変な顔をして、何かあったの? 美雪(私服): んー……なんか、理由もないのにすごくムカッとして嫌な気分になってさー。 菜央(私服): ……奇遇ね。実はあたしもよ。 田村媛命: では、頼んだ哉。余計なことは気にせず、何も考えることなく吾輩の帰還を待つ也や。 一穂(私服): あっ……ちょ、ちょっと田村媛さまっ? と、空間転移の術を発動させた直後に何かを思い出したのか、カズホが吾輩に呼びかけながら手を伸ばしてくる。 が、すでに術によって生み出された形容しがたい彩りの『門』は吾輩の身体を包み込んで、戻ることは叶わなかった――。 …………。 田村媛命: ……。無事に、辿り着いた哉。吾輩が術をしくじることなどあり得ぬが、まずは重畳と自身を称える也や。 周囲を見回し、ここが民たちの住まう邸宅の居間であることを確かめて、吾輩は安堵を覚える。 壁際には、カズホたちが着ていたと思しき服。つまりここは、彼女たちが暮らしの拠点にしているところだろう。 田村媛命: さて……それでは行動を開始する哉。まず、吾輩の行くべき場所は……。 美雪(私服): あれっ……? 今後の予定について思案に暮れていたその時、隣の部屋からミユキとナオが姿を見せる。そして――。 菜央(私服): おはよう、「一穂」。今日は早いのね。 そう言って2人は、吾輩に屈託のない笑顔を向けてきた……。 Part 02: 公由一穂(田村媛命): (ふむ……どうやら成功#p也#sなり#rや) ミユキとナオの反応を見て、吾輩はついほくそ笑んでしまいそうな思いをなんとか隠し通す。 そう……これがカズホと入れ替わった理由。彼女と吾輩は「波長」が近しいおかげか、変化によって姿形を「真似」しやすい。 ゆえにこの地では吾輩の姿ではなく、カズホとして行動させてもらうほうが動きやすいと考えたのだ……。 美雪(私服): ? どうしたのさ、「一穂」?どこか身体の具合でも悪かったりするの? 公由一穂(田村媛命): いや……別に問題はない#p哉#sかな#r。案ずる必要は無きことと知り給え。 菜央(私服): 「一穂」……その喋り方は何?ひょっとして、あのポンコツ神の物真似? 公由一穂(田村媛命): そうではないが……って、ポンコツだとっ? 菜央(私服): ……なに怒ってるのよ?あの神様がポンコツだってことはあたしたち3人の共通認識だったじゃない。 公由一穂(田村媛命): そ……それはまこと也や……?じゃなかった、そうだったか……? あまりにも不本意かつ無礼極まりない称し方に思わずいきり立ってしまったわが身をたしなめ、吾輩は咳払いをする。 というか、この2人ならいざ知らずカズホまで吾輩をポンコツ扱いしていたとは実に業腹な……! ……戻った際に土産でも渡してやろうと思っていたが、白紙撤回だ。天罰も検討したが、さすがにそれはやめておく。 いずれにしても、あの阿呆神を見つける前に素性がバレてしまっては本末転倒も甚だしい。ここはうまくごまかすことにしなければ……。 公由一穂(田村媛命): ……っ……。 カズホの口調に関しての情報を入手し、「実体」の思考中枢に書き込みを行う。 一時的にせよ、彼女になり切るには体裁だけでも整える必要があるだろう……これでよし、と。 公由一穂(田村媛命): ごめんね美雪ちゃん、菜央ちゃん。えっと……夕飯のお買い物はもう済んだの? 美雪(私服): へっ? あ、いや……いつの話をしてるの?今はもう朝で、夕食にはまだ早いんだけど。 公由一穂(田村媛命): あ、あれっ……そうだったっけ? 確か、一穂を連れ出したのは夕暮れ時だったはずなのだが……どうやら微妙に時間がずれてしまったらしい。 なんにせよ、このまま黙っていては収拾がつかなくなること必定だ。さて、うまい言い訳は……。 菜央(私服): ひょっとして一穂、まだ寝ぼけてる……? 公由一穂(田村媛命): えっ? あ、う……うんっ。昨日よく眠れなかったみたいだから、ちょっと……うん。 うまい具合にナオが勘ぐりを入れてくれた。これ幸いと、便乗させてもらうことにする。 美雪(私服): んー、大丈夫かい?今日は川遊びに出かけることになってるけど、寝不足気味で行くのは危険だと思うし……。 美雪(私服): なんだったら、今日は家で休んでてもいいよ。魅音たちには私から、うまく言っておくからさ。 公由一穂(田村媛命): ううん、大丈夫……!そっか……今日は川遊びに行くんだね。 公由一穂(田村媛命): だとしたら、あの阿呆……じゃなかった、羽入ちゃんたちも一緒に来るのかな? 菜央(私服): もちろんよ。今日は全員で部活をやることになってるんだから。 公由一穂(田村媛命): ……っ……! なんという僥倖……早速あやつと接点を持つことができるとは、大いに手間が省けたというものだ。 公由一穂(田村媛命): (よし……ならばミユキたちと同行して、頃合いを見て羽入と二人きりになる也や) 美雪(私服): けどさ……一穂、ちゃんと覚えてる?今回の部活は「王様フィッシング」だから、服は着込んでいったほうがいいと思うよ。 公由一穂(田村媛命): うん、わかった……って、王様フィッシング?それってなんなの? 菜央(私服): 文字通り、魚を釣った子からくじを引いて当たった子に命令ができるゲームよ。しかも、その内容が――。 …………。 ……あとになってから、どうしてもっと詳しくやり方を聞かなかったのかと、吾輩は激しく悔やむことになる。 魅音(私服): ぃよおぉぉしっ、釣れた釣れたー!これで5連続だよ~!! 公由一穂(田村媛命): んのわぁぁぁっ?! 沙都子(私服): をーっほっほっほっ、私も4匹目をゲット!というわけで……。 魅音・沙都子: 王様の命令に絶対従う、家臣は誰かのくじ引きターイム!……って、今度も一穂(さん)で決定(ですわ)~!! 公由一穂(田村媛命): ひっ……ひぃぃぃいぃっっ?! 嬉々として目をぎらつかせる#p雛見沢#sひなみざわ#rの娘ふたり――ミオンとサトコに迫られた吾輩は、悲鳴を上げて後ずさる。 先ほどからこの2人は、なぜか吾輩を集中的につけ狙い、「罰げぇむ」と称した辱めを与えてくるのだ……! 魅音(私服): いやー、悪いね一穂。あんまり狙い続けるのはイジメみたいだから、少しは手加減してあげたいんだけど……。 沙都子(私服): 一穂さんのご反応とご表情が嗜虐心をくすぐると申しますか、琴線に触れるものでして……これも試練だと思って、受け止めてくださいまし♪ 公由一穂(田村媛命): こっ……こここ、こんなのは試練じゃない哉っ!むしろ相手の尊厳を粉々に破壊する、女子として一番忌避すべきもの也やぁぁぁ?! 梨花(私服): みー……今日の一穂は難しい言葉を使っているので、何を言っているのかチンプンカンプンなのですよ。 レナ(私服): は、はぅぅ~!一穂ちゃんのオットセイ……じゃなかった、生まれたまんまの姿をお持ち帰りぃぃ~♪ 公由一穂(田村媛命): こ、こここ、この下着までもはぎ取るつもり哉っ?貴様らは鬼か、悪魔か?! いつか必ず、この報いを受けるものと覚悟し給えぇぇっ!! 魅音(私服): まぁ……確かに全裸にまでひん剥くのは、倫理的にもちょっとやりすぎかもだね。 魅音(私服): というわけで、一穂にはこの旧タイプのスク水を着させてあげるとしようかな……くっくっくっ! 公由一穂(田村媛命): な、なななっっ……?! ミオンが差し出してきた「スク水」なる破廉恥なモノを見て、吾輩は文字通り凍りつく。 もはやそれは、衣類と呼べるものではない!体形もあらわになるし、手足の肌が丸見えで裸と大差ないであろうに?! 公由一穂(田村媛命): た……助ける哉、じゃなかった、助けて美雪ちゃん、菜央ちゃん!このままだと私、お嫁に行けなくなっちゃうよ~? 美雪(私服): あー、うん。助けてあげたいのはやまやまなんだけどさ……。 菜央(私服): なんとなく今日は、このまま放置しておくのが一番だと思えるのよねー……。 公由一穂(田村媛命): い、意味がわからない哉ッ! 美雪(私服): あー、魅音。一穂のスク水の名札部分だけど、白紙になってるみたいだからあとで書いていい?今日の記念にさ。 公由一穂(田村媛命): い、いったい何の記念也やぁぁぁ?! Part 03: 田村媛命(スク水): はぁ……油断が過ぎたとはいえ、酷い目に遭わされた#p也#sなり#rや。 「今日は失礼する」と連中をうまく説き伏せ、人気のない山中の水場にたどり着いた吾輩はそこでようやく安息の機会を得る。 この、忌まわしい衣服はさっさと脱ぎ捨ててもとの神衣に着替えてしまいたかったが……。 せめて戻る前に水浴びだけでもしておきたいと思い、人の目がないのを見計らってから浅瀬に足を踏み入れた。 田村媛命(スク水): ……なかなかの冷たさ#p哉#sかな#r。この疲れた気分を癒すにはもってこい也や。 そう呟きながら吾輩は、少し離れた場所にある小さな滝のところに向けて歩みを進める。 万物を知覚できる「実体」に宿って、自然物に触れるのは何年ぶりのことだろう……そんな感慨に浸り、流れの中に身を沈めた。 田村媛命(スク水): ふむ……悪くない哉。温泉にてぬくもりを得るのも心地よきながら、冷水も心身ともに安らぎを覚えるもの也や。 田村媛命(スク水): 「実体」をゆだねるこの感触、久しく忘れていた哉……ん……? などという呟きをこぼしていたその時……背後に気配を感じる。 はっ、と勢いよく振り返ってはみたが、そこに立っていた者の姿を見て緊張を解き……吾輩はため息を吐き出した。 田村媛命(スク水): ……なんだ、貴様か。 岩場の奥の茂みから顔を出したのは、吾輩がこの地にて所在を探っていた角の民の長……羽入だった。 羽入(私服): あぅあぅ……まさか、あなたが「実体」を得てやってくるとは意外だったのです。何か気の迷いか、心に異常をきたしたのですか? 田村媛命(スク水): ……顔を合わせて早々、失礼な物言い哉。吾輩は理に基づき使命を帯びた上で、この地に降り立った也や。 羽入(私服): 使命……ですか? 田村媛命(スク水): #p然#sしか#rり。こたびは貴様の、神の立場にあるまじき軟弱な振る舞いと心構えを糾弾しに参った哉。吾輩からの諫言、受け止めるべきと知り給え。 羽入(私服): 諫言などと言われましても……そのような格好をしているあなたに言われたくないのですよ。 田村媛命(スク水): む、これは……つまり……。 確かに、こんな格好で神の威厳などと申しても噴飯ものだと、さすがに些か気恥ずかしくなる。 とりあえず吾輩は水辺から出ると、改めて羽入に向き直っていった。 田村媛命(スク水): さて……そなたは神の身としてこの地の民と交わり、その下々の行いや考えに邪が入らぬよう監視するが役目であったはず。 田村媛命(スク水): しかるに今は、ただ徒に漫然とその日を過ごして規律もなく、堕落を極めているとしか思えぬ哉……。 田村媛命(スク水): ゆえに同じ神の身として、そなたに警告を下しに参ったものとして受け止め……粛々と己の愚かさを反省し給え。 羽入(私服): 警告……ですか。とはいえあなたも、さっきは魅音たちと一緒に楽しそうに騒いでいたのですよ。 田村媛命(スク水): 楽しんでなどおらぬッ!というか、貴様も吾輩に気づいていたらなんで助けぬ也やっ?! 羽入(私服): 巻き添えは御免こうむるのですよ、あぅあぅ。 ……一瞬殺意が芽生えかけたが、神の矜持を総動員してなんとか抑え込む。 本当にこやつとは、つくづく相性が合わない。いつか来るべき最終戦争の際には、必ずや雌雄を決してやる……と改めて心に決めた。 田村媛命(スク水): そ……それにしてもこの地の者は、カズホにあのような仕打ちをしている哉?もはやあれは、折檻にも等しい狼藉也や! 田村媛命(スク水): ミユキとナオも全く止めようとはせぬし、ひょっとしてカズホは連中から疎まれて被虐の対象とされている哉……? 羽入(私服): そんなことはないのです。あぁ見えて魅音たちは、本気で嫌がっていたら無理強いをしたりはしないのですよ。 田村媛命(スク水): では吾輩が、本気で嫌がっていなかったと貴様は申すかっ……? 羽入(私服): その点についてはあなたの見解なので、僕は何も言わないのです。それと……美雪と菜央は、あなたに気づいていたのです。 羽入(私服): むしろあの程度で収めて、思っていたより2人は理性的だったと見直したほどなのですよ。 田村媛命(スク水): な……何を申す哉。最初こそ言葉遣いを模倣するのに苦心はしたが、それ以降は普通に溶け込んで会話も弾んでいた也や。 田村媛命(スク水): ……それとも、正体が露見していたという何か証拠でもある哉? 羽入(私服): 胸に貼りつけてある名札、もう一度よく見てくださいなのですよ。 田村媛命(スク水): んなっ……?! 胸の膨らみの下あたりに貼られたせいで、よく見えていなかったが……改めて表記された名を読んだ吾輩は、驚きのあまりに言葉を失う。 そこに記されていた名前は、「公由」でも「一穂」でもなく……「田村」。 つまり美雪と菜央は、先ほど出会った時からずっと吾輩の正体を知っていたということだ……! 田村媛命(スク水): お……おのれっ! 吾輩をたばかり、神であるこの崇高な存在を認識した上でのあの所業、断じて許すまじッ!! 田村媛命(スク水): 一度あの者たちには、目にもの見せてやらねば気が済まぬ哉! 角の民の長よ、わが御子2人が今どこにいるのか疾く疾く教え給えッ!! 羽入(私服): あぅあぅ……姿を変えたのにもかかわらず、人の子に見抜かれてしまった己の術の拙さをまず反省したほうがいいと思うのですよ。 田村媛命(スク水): ぐっ……そ、それは……?! 田村媛命(スク水): だ、だいたい……全ての原因は角の民の長、そなたに端を発すること甚だしき也やっ! 田村媛命(スク水): そなたがもう少し、神の立場であることをしっかりと理解して立ち振る舞っておれば、吾輩がここに来る必要もなかったであろうに! 羽入(私服): ……その点については、僕なりに考えがあってのことなのですよ。ですから今のまま、見守ってくださいなのです。 田村媛命(スク水): っ、考え……とは? 羽入(私服): #p田村媛#sたむらひめ#r命……畏怖して暴れ回ったり、信仰を強要したりすることが神の行いとも思えないのです。 羽入(私服): むしろ僕は、人の子たちとの活動や会話を通じて「世界」の理と、命の在り方を学んでいきたいと考えているのですよ。 田村媛命(スク水): ……その結果が、現在のような堕落か?見苦しい言い訳といえどもう少し、説得力のあるものを選ぶが善と知り給え。 羽入(私服): あぅあぅ……確かに、おいしい食べ物や面白い遊びに心惹かれ、夢中になりすぎる時もあったりはしますですが……。 羽入(私服): 神である立場を維持しようとし続けるなら、もっと人の子たちの嗜好や夢、願いなどを身をもって理解すべきだと僕は思うのです。 羽入(私服): それは、堕落とそしられる行いかもしれない……でも彼らの意思を尊重し、幸せを願うのであれば分かり合う努力も必要だと思うのですよ。 羽入(私服): 田村媛命……あなたもその意味では、先ほどはそれなりに楽しんでいたのではないのですか? 田村媛命(スク水): …………。 田村媛命(スク水): ふん、興が冷めた哉。今日のところは出直す故、そなたとの会話はこれで仕舞いと知り給え。 田村媛命(スク水): 次は許さぬこと、ゆめゆめ忘れることなく己を律し戒める也や。……さらば。 羽入(私服): …………。 羽入(私服): 田村媛命……神とは、そんなに偉いものではないのです。 羽入(私服): むしろお互いに生きて、生かされる……それぞれに影響をもたらしてゆくべき存在なのですよ……きっと……。 田村媛命(スク水): …………。 田村媛命(スク水): 人の子たちの夢、願いを理解する……哉。 田村媛命(スク水): さようなこと、すでに吾輩もこの眼にて観続けているところ也や。 一穂(私服): あ……あれっ? ここは……。 美雪(私服): ただいまー、一穂。今帰ってきたよ~。 一穂(私服): あ……お帰り美雪ちゃん、菜央ちゃん。 菜央(私服): ……どうしたの、一穂?浮かない顔をしてるみたいだけど、何かあった? 一穂(私服): ううん、別に。ちょっとうたた寝をしちゃってたのかも……。 美雪(私服): そっか。とりあえず夕食の準備をするから、ちょっと待っててね。 一穂(私服): ……うん、ありがとう。