(はあ、今日はフリプで初めて会った子にボコボコにされたな……)

買い物の帰り道、浪漫は一人で今日の対戦の振り返りをしていた。
いつも通りカードショップのフリプスペースでカードを回していた時に対戦を申し込まれたのだが、その対戦相手が浪漫が初めて会う相手であった。現環境はコンボが流行しているため浪漫は大型を早出しする型にデッキを改造していたのだが、その対戦相手がビート型の白黒メカ、それもメタカードやハンデスなどの搦め手も無い純ビート型であり防御力を下げていた浪漫にはひとたまりもなくほぼ一方的にやられてしまったのであった。余りにもビートへの耐性を下げ過ぎてたと反省し、どのトリガーを積んで防御力を上げようかと脳内でリストアップした。

「きゃっ！？」
「うわっ！？」

このようにデュエマの構築について考え事をしながら歩いていたためか周囲への注意力が疎かとなり、曲がり角で横の道から走ってきた女性とぶつかってしまった。

「す、すみません……こちらの不注意でぶつかってしまって……」
「も、申し訳ございません！自分が急いで走ってたせいでこのようなことを……えっ！？」

曲がり角でぶつかり、お互いに尻餅をつきながら謝罪するが、女性は何かに気が付いたかのように瞠目する。浪漫が顔を上げてぶつかった相手を見てみると、丁度今日のデュエマでボコボコにしてきた女性と同じような橙色の髪をしたメイドがそこにいた。

「あっ、あの……だ、大丈夫、でしょうか……？」
「い、いえっ、問題ありません！こちら急いでますのですみませんですが帰らせていただきます！！」

浪漫が気遣うような発言をすると、橙色の髪のメイドが慌てて会話を打ち切り急いで走って帰っていった。今日フリプで戦った相手と同一人物かどうかを聞きそびれてしまった浪漫は、フリプスペースにいればまた会えるかもしれないと思い気を取り直して帰路に就いた。

そして翌日、ルーティンの一環として浪漫はカードショップのフリースペースで紙に触れていた。今使用しているデッキを広げ、新しく持ってきたカードを横に積みながらどう改造しようかと悩んでいた。今まで対コンボを想定していたがビートダウン相手に防御力を上げようとしていたのであった。

「よっ、今日も会ったな。相席いいか？」
「あっ……ど、どぞ……」

デッキ構築に悩ませていると昨日対戦した橙色の髪の女性が再び現れた。女性の言葉に頷きながら浪漫は目の前に現れた女性について観察をしてみた。

(う、うーん……昨日交差点でぶつかった人とそっくりだなあ……でも口調がさっぱり違うよね……？)

記憶にあるメイドの女性の姿と重なる部分があるものの、一部異なる部分もあった。実際に同一人物なのか気になった浪漫は尋ねてみようと口を開く。

「そ、その……昨日の交差点の……こ、ことについて、なんですが……」
「はあっ！？昨日の交差点で会った奴のことならどう考えても私と別人でしょ！口調も全然違うし！？」
(えっ、まだ口調について説明していないような……)

まだ『昨日の交差点』としか言っていない段階で、目の前の女性が全力で否定してきた。そこでぶつかった女性と今目の前の女性の口調が異なることを根拠に別人だと主張しているようだが、ぶつかった女性の口調を知っている時点で同一人物だと白状しているようなものであった。

「あ、は、はい……わかり、ました」
「わかりゃいい、わかればな」

しかし相手が全力で否定してくるということは何かしらの事情があるのだろうと思い、浪漫は追求しないことにした。

「んで……今日もフリプ頼めるか？」
「は、はい……よろしくお願いしますっ！」

そして向かいの席に着いた女性の頼みを受け入れ、テーブルに広げていたデッキを纏めて一部カードを入れ替えて相手に差し出した。

「そういや名乗ってなかったな。私は陽衛星奈だ。お前の名前は？」
「あっ、ぼ、僕は耐反浪漫です……！」
「へぇ、浪漫っつーのね。んじゃ……デュエマスタート」

互いのデッキをシャッフルし、自己紹介をした後、デュエマを開始したのであった。