Part 01: とりあえず、幽霊ならぬ『ツクヤミ』という怪物なのかそもそも生物なのかさえ怪しいシロモノと戦わされた後、運命の日の朝を迎えた俺たちに向かって、ハルヒは――。 ハルヒ: みんな、今日は野球であの子たちと対決よ!朝食を食べ終わったら、隣町の#p興宮#sおきのみや#rのグラウンドに集合ね! 昨夜に続いてのご馳走に舌鼓を打って気を良くしたのか、他4名の団員たちの緊張と不安など我関せずとばかりに提案を持ちかけていった。 ハルヒ: 昨夜、ご飯を食べながらあの子たちから聞いたのよ。なんでもこの#p雛見沢#sひなみざわ#rには少年野球チームがあって、みんな時々集まって試合とかをしてるんだって。 ハルヒ: 特に、あの北条沙都子って子は小さな身体に似合わずものすごい長距離打者だって言ってたわ。 ハルヒ: 昨日の怪物退治では多少遅れを取ったけど、野球だったらわがSOS団の十八番!あたしたちの実力を見せつけてやりましょう! 朝っぱらから野球かよ。しかも今日は夕方から村祭りがあって、村の女の子たちもそれどころではないと思うんだが。 ……なんていう俺の心配は、配膳の食器を片付けにきた園崎が「いいねー!」とあっさりハルヒに賛成して、杞憂に終わる。 その後、早速村の子たちに誘いの連絡が送られて話はとんとん拍子に進み――。 俺たちは黒塗りの大きな車に乗せられて興宮へと移動し、そこにあるグラウンドで野球対決を行うことになった。 ハルヒ: そういえば、有希がいないじゃない。どこに行ったの? キョン: あぁ……長門だったら、おそらくあそこだ。 やはりと言おうか、長門は古手神社にいた。石段の上で腰を下ろし、いつものように本を読んでいる。 キョン: おーい、長門。 有希: …………。 石段の下からのぼりつつ声をかけると、長門は顔を上げてこちらに目を向けてきた。 キョン: ここ、静かで涼しくて読書するには最適だよな。お前ならここにいる気がした。 キョン: すまんがまた、ハルヒの召集だ。手を貸してくれ。 有希: ……了解した。 短く返事をして長門は本を閉じ、石段から立ち上がる。そしてすれ違い際、……小声でぼそり、と呟いていった。 有希: ……注意して。 キョン: ……っ……? いったい、何を注意しろというのだろう。それを確かめる間もなく長門は石段を降りきり、下で待っていた車に乗り込んでいった。 キョン: やれやれ……本当に来ちまったか。 ため息をつきながら、それにしても……と俺は思う。ただでさえおかしな「世界」に放り込まれたというのに、こんなのん気なことをしていてもいいのだろうか。 最大のピンチで唯一のチャンスというのがなんなのかは未だにわかっていないものの……あの古手梨花という子は昨夜、今日の夜に何かが起こると話していた。 それが村祭りのことを指しているかどうかはさておき、たとえ何が起きたとしても彼女の言に従って何らかの対処ができるように備えておくべきだと思うんだが……。 古泉: 確かに、あなたの懸念はごもっともです。それに加えて、涼宮さんのストレスによりこの「世界」にも閉鎖空間が生まれて神人が現れて暴れ出すか……。 古泉: あるいは、元の世界で閉鎖空間が生み出される可能性も否定できません。……もっとも後者が起きた場合だと、今の僕にはどうしようもありませんが。 キョン: ……その場合は、どうするんだ? 古泉: 他の仲間たちに対処をお願いすることになります。優秀な能力者揃いなので、僕ひとりがいなくてもなんとかしてもらえると思いますよ。 ……ちなみに「閉鎖空間」とはハルヒが自ら抱く不機嫌さを解消すべく無意識に生み出した、いわゆる異空間のことだ。 そこで「神人」なる怪物を好き勝手に暴れさせることで、彼女は自分のいる世界に対して鬱憤晴らしをするという実にはた迷惑な能力を持っていた。 古泉: ストレスを持ち続けてると涼宮さんは現在の世界を否定して、全部作り変えてしまいかねませんからね。僕はまだこの世界に愛着があるので、なるべく避けてもらいたいところです。 キョン: それは俺も同じだ。……もっとも、あの気まぐれなやつに俺たちの世界のリセットボタンが握られてるかと思うと、それはそれで理不尽感がものすごいんだが。 古泉: はは。まぁ、古手梨花さんがおっしゃったのはあくまでも「夜」ということですから、逆に考えれば現時点ではまだ平和に過ごせるということではないでしょうか。 古泉: それに……見てください。涼宮さんがあんなにも楽しそうだというのは、任務的な話を抜きにしてもとても喜ばしいことです。 古泉: なので短い間ですが、我々もこの不可思議な世界を堪能するというのも悪くないかもしれません。 その帰結点にたどり着くのが、一番難しいんだがな。……とはいえ、ハルヒがご機嫌なのは俺にとっても確かに悪いことじゃない。 なにより、起こってもいないことで緊張していても疲れるだけだ。そう思って俺は、古泉が言った通り夜までの時間は現状の流れに任せることにした。 しかし……始まってから早々、嫌な予感がした段階でやはり止めておくべきだったと俺は激しく後悔していた。 確かに誘ったのは俺たち……というより、ハルヒだ。それに、お互いの親睦を深めるためにスポーツを用いるのは古今東西よくあることだし、提案としては悪いものじゃない。 また、勝負を決する対戦形式であっても全力をぶつけあったことで意外な一面を垣間見たりして、さらに仲良くなるという利点も多く存在する。 だが……それは常識の範囲内で、ということが前提だ。もっとも、この場合の常識がどの程度を指すのかは個々人の経験則と価値観によるところが大きいのだが、 とりあえず法律に違反せず、かつ物理法則によって理論と限界値が定められた上で生命はもちろんのこと、深刻な怪我などが起こりえない「遊び」としておこう。 で、だ。その常識という制限が設けられている相手が俺たち……いや、俺以外のSOS団のメンツと戦うのははっきり言って無謀、無茶といってもおかしくなく、 傲慢に言うと天に唾するに等しい行為でもあるので、俺としては彼女たちが多少善戦したように見せかけてお茶を濁す程度に相手をすればいいと考えていた。 …………。 いや……認めよう。うっかりしていたというより、俺はこれまでハルヒたちと行動を共にしてきたことで多少うぬぼれていたのかもしれない、と。 なにしろ、ここは雛見沢だ。本来なら存在しないはずの「世界」に送り込まれたということは、当然これまでの常識は全く通用しない可能性も考慮すべきだった。 そして、彼女たちの力を目の当たりにすることで俺たちは親睦を深めること以上に重要視すべき事項があったことを思い出さずにはいられなかった。 Part 02: とりあえず、気持ちが空回りどころか上滑りして初めから戦力外な朝比奈さんはまぁさて置くとして……。 俺としては真面目にやっているつもりだし、古泉と長門も#p雛見沢#sひなみざわ#rの子たちに対して能力を隠すことなくプレーに集中していた。 特に、長門に至っては機械でもほぼ不可能なレベルの正確無比なコントロールの剛速球で、異能を持つ彼女たちをきりきり舞いに抑え込んでいく――はずだったのだ。 沙都子(私服): ――もらいましたわっ! 最初にとんでもない力を見せつけてきたのは、先頭打者としてバッターボックスに立った小学生の女の子だ。……名前は確か、北条沙都子だったと思う。 どう見てもホームランどころか長門の豪速球を打ち返せるとはとても思えない小さな体格をした彼女は、どこにそんな力が、と驚くほどの鋭いスイングでバットを振り抜き――。 打ち上がった球は銃の射撃、いや大砲の射出のように天高く駆け抜けて宙を貫き……あっという間に遠く離れたフェンス向こうの遥か彼方へと消えていった。 沙都子(私服): をーっほっほっほっ、ホームランっ!まずは1点先制ですわぁ~! キョン: なっ……なんだ、あの打球は!?どこをどう打てば、あんなにボールが飛ぶっていうんだ? 明らかに物理法則を無視した、ありえない一撃。……しかも、彼女たちの攻撃はそれだけで留まらなかった。 魅音(私服): そりゃっ! 美雪(私服): あらよっと! レナ(私服): はぅ~っ! 圭一(私服): もらったぜー! とんでもない勢いで打球がことごとく外野の奥へと飛んでいき、あっという間に追加点が加えられる。 いや……ありえない。間違いなく非常識な現象なのだが、改めて思う。ここはやはり、あの怪物が出てくるほどの異常な場所だということを……! ハルヒ: ……驚いたわね。あの子たちの実力がここまで傑出してるなんて、さすがに予想外だったわ。 スコアボードに記された点数を見つめながら、ハルヒは驚きに目を丸くしながらも感心したような表情を浮かべている。 5回を終わった時点で、点差は2点。初回こそ連打を浴びて大量得点を奪われたものの、その後は規格外の「彼女」を除いてなんとか抑え込むことができた。 さらに、裏の攻撃では長門が細工を施した通称「ホーミングモード」のバットで点を取り返し、そのまま一気に突き放そうとしたのだが……。 キョン: 『よし、もう1本っ!……って、ななっ?』 会心の手応えとともに天高く放たれた俺の打球は、放物線があり得ない方向に曲がってがくん、と失速し真下にいた園崎によって捕球された。 魅音(私服): 『いやー、なかなかの当たりだったのに残念でしたねー。上空で風に吹き返されたのかな? くっくっくっ……!』 そう言って彼女は、とぼけた表情で笑ってみせる。……が、俺は確かにこの目で見ていた。打球が空中で、何か壁のようなものに当たった動きを……! 有希: 『……エネルギー障壁の発生を視認。発生源は不明だけど、高確率で例の「カード」が生み出した力場だと考えられる』 キョン: 『そんなこともできるのか、あの「カード」は?もはや何でもありだな……』 有希: 『ホーミングモードを調整する。力場の発生にはタイムラグと有効範囲がある。その隙間を狙って』 キョン: 『……狙うにしても、俺はバットの動きに合わせて腕を振るだけなんだが』 なんてやりとりをしてからとりあえず俺は一発狙いを捨て、朝比奈さんと古泉に対してもとにかく当てることを徹底させる。 ……ハルヒに関しては、何か言ったところで聞くはずもないので好きにさせることにする。それでもヒットを何本か放っていたので、たいしたものだ。 ……あと、先に説明しておくべきことを今さらで申し訳ないが、俺たちがここで行っている野球は「田舎式」のルールが適用されていた。 田舎式のルールというのは、簡単に言ってしまうとどこまで打球を飛ばしてもホームランエリアに達しなければインプレーで、かつランナーは自由に進むことができない。 また、野手はゴロ、フライの関係なく捕ったボールをその場からホームベースに投げて、待ち構えている相手がちゃんとキャッチすればアウト。それ以外は単打だ。 では、なぜこのルールが採用になったのかというと通常の野球の試合を行うには最低9人が必要なのだが、単純に俺たちが5人しかいないことが理由だった。 いわゆる野球盤ゲームと同じ、と考えてもらえたらわかりやすいかもしれない。それも2塁打やダブルプレイといった球の落とし穴が一切存在しない、といったものだ。 これだと、野手が8人以下でも試合を成立させることができる。バッターやランナーの塁間の動きを念頭に置く必要がないので、守備側は少ない人数で打球の行方だけに集中すればいいからだ。 要するに打球を追ってボールを掴み、ホームベースに向けて投げられたそれをキャッチすればいいというものなので、ホームラン性の当たりさえなければ大丈夫……なのだが……。 沙都子(私服): をーっほっほっほっ、6打席連発っ!これでまた、私たちが突き放しましてよ~!! 魅音(私服): くっくっくっ……ナイス、沙都子!田舎式ルールで戦う私たちの沽券にかけて、都会っ子にゃ負けてらんないからね~! キョン: くっ……なんなんだ、あのチビスケは!ちっこい身体のくせに、とんでもないパワーで大きな当たりを打ってきやがって……! ハルヒ: 次が最終回……これ以上点を取られたら、逆転の目はなくなるわ。有希ー、きついかもしれないけどなんとか抑えてー! 有希: ……(こく)。 長門は無言で頷き返すが、どれだけ速くて重い球を投げ……いや射出したところで打ち返されるのだから、彼女としても打つ手がないのだろう。 古泉: さて……どうしましょうか?涼宮さんは今のところ楽しんでいるようなので、このままでも大丈夫のような気もしますが……。 古泉: なにしろ涼宮さんは、負けず嫌いです。どんな終わり方であれ、最低限敗戦だけは避けておいた方が無難かもしれませんね。 いや、わかってる。わかってはいるが……ここまで力の差があるとは思っていなかったのだ。まるで漫画やアニメで見た、超人野球の世界だ。 …………。 やむをえまい。こうなったら形振り構わずだ。俺は一計を案じ、長門に話しかけていった。 キョン: おい長門、ピッチャーは俺に交代だ。お前は野手に徹して、打球を追ってくれ。 キョン: ……あと、あの「カード」の力の発動を妨害することとかはできるか?もちろん打球に物理的な干渉を同時にしながらだ。 有希: 現時点で、私の能力は著しく制限されている。ただ、投球に使っていたリソースをあてがった上でリミッターを解除すれば……可能。 キョン: よし……!だったらこの際、ルールは無用だ。思う存分、盛大にやってやれ! 有希: …………。 だが、なぜか長門はすぐに返答せず、軽く空を見上げて何かを考えるように黙り込んでいる。 キョン: どうした、長門。何か気になることでもあるのか? 長門: ……問題ない。今のところ動きを見せる気配は皆無。現状は事態の推移を傍観しているのみと判断する。 なにやら妙な言葉を呟いたようにも聞こえたが、長門なりにこの「世界」に悪影響を及ぼさないか迷っているのかもしれない。 そう思って俺は、彼女を励ますつもりで努めて明るく声をかけていった。 キョン: 大丈夫だ。この試合で勝利したかどうかで、世界の何かが変わったりしない。そもそもあいつらの方が、おかしな力を使ってるんだからな。 有希: ……了解した。 Part 03: レナ(私服): やったぁ、いい当たり……って、ええっ? 有希: ……捕球完了。 竜宮という女の子が放った打球は、とんでもない角度で空に舞い上がった……が、空中で何かとぶつかったように突然向きを変える。 そして「うまい具合」にちょうど真下にいた長門のグラブの中にぽとりと収まり、フライアウトになった。 レナ(私服): は、はぅ……絶対、ホームランだって思ったのに……。 菜央(私服): 『ロールカード』を使って、ブーストをかけてたのよね?なのに、あれだけ失速するなんて……どうしてかしら。 #p雛見沢#sひなみざわ#rの子たちは、不可解な打球の飛び方を見ていったい何が起きたのかと首をひねっている。 長門が使った能力……それは「カード」の力が機能しないように妨害し、打球の勢いや軌道にも同時に物理的な変化を加えることだった。 魅音(私服): くっ……?だったら次は私が――おりゃぁぁぁ!! 有希: ……ECM作動。併せて空間に干渉、座標内の分子密度を増大させて空気抵抗を極限値に。……成功、捕球完了。 魅音(私服): んなっ? な、なんで……?手応え十分にジャストミートしたってのにー! 美雪(私服): ……魅音。どうやらあの野手に回った子が、『ロールカード』の力を抑え込んでるみたいだよ。 魅音(私服): やっぱり、美雪もそう思う……?最初のうちから打球の軌道を変えたり、空気中に壁を作ったりしていたからもしやとは思っていたけど……。 圭一(私服): いわゆる電子攻撃ってやつか。そんな力を持っているなんて、さすが異世界人だぜ……! 沙都子(私服): 許せませんわ……! 神聖なスポーツの場に異能の力を秘めたアイテムを持ち込むなんて、最大級の侮辱行為でしてよ……っ! 梨花(私服): みー。ボクたちも『ロールカード』を使いまくっていたので五十歩百歩、おあいこなのです。沙都子なんて、何枚も同時発動させていたのですよ。 沙都子(私服): い、いえこれはその……!有希さんの豪速球があまりにもすごいものでしたので、打ち負けてなるものかと思いまして……! 菜央(私服): いずれにしても、あっちがその気なら遠慮無用よ。打者以外の子たちも『ロールカード』を使って、みんなで打球の勢いを後押ししましょう。 一穂(私服): というか、『ロールカード』ってそういう使い方もできたんだね。……初めて知ったよ。 羽入(私服): ……あぅあぅ、もはや昨日の『ツクヤミ』退治と内容があんまり変わらなくなってきたのですよ。 圭一(私服): それを言ってやるな、羽入……。 そして、裏。この回の先頭打者の俺はバッターボックスに向かおうとしたが、バットを掴む前に長門がそれを手に取り早口言葉を小声で呟き始めた。 キョン: ……何をした? 有希: ジャミング機能を追加した。あの「カード」によって生み出された力場を無力化し、障壁を破壊する。 キョン: 大盤振る舞いだな……。 そういえば、以前SOS団で参加した野球大会でも彼女がインチキパワーを付加してくれたことを思い出す。……あの対戦相手のチーム、元気でやってるといいんだが。 キョン: よし……行くか。 …………。 さて。その後のことを一応語っておくと、試合は俺たちの逆転勝利で終了した。 雛見沢の子たちも「カード」の力を使って善戦したが……力場操作に加えて妨害攻撃まで併せ持つ長門に勝てるやつなど、そうそういるものではない。 おかげで残りの回、表の守備ではあの手この手で大飛球をかっ飛ばしてくる彼女たちのすさまじい猛攻は、障壁だの重力操作だのの餌食となって大半が沈黙し――。 時々、それらを全て突破してくるやつもあったので完全にフライアウトに収めることはできなかったが、インプレーの打球は俺と古泉で無難に処理することができた。 そして、裏の攻撃では長門印のインチキバットが火を吹いて、ホームランの連続。……朝比奈さんですら、バットからボールに当たりにいって楽々柵越えだ。 だが、すぐさま雛見沢の子たちはあの手この手で対抗策を講じ、こちらも長門が臨機応変に対応……まさにいたちごっこの繰り返しだ。 そして最終回、ついには長門が「カード」の力を突破する最終兵器・#p超電磁砲#sレールガン#rを持ち出して、見事サヨナラホームランを決めることに成功した。 …………。 改めて説明してなんだが、もはやスポーツではなく異能バトルものの概要を語っているような気分だ。それも99%以上、長門がひとりで複数相手に戦って おかげで勝ったのに、全く勝った気がしない。……まぁハルヒは喜んでいるようだから、よしとしておこう。 魅音(私服): くぅぅ……負けたぁ~!でも楽しかったです、ありがとうございました! キョン: あ、あぁ……お前たちも、すごいな。ここまでとは思ってなかったよ。 美雪(私服): あはははっ、そんなことないですよ~!キョンさんたちも「カード」の使い方を覚えたら、これくらい簡単にできますって! ……確かに魅力的な誘いで一瞬心がぐらついたが、それはもはや人間を辞めることに等しいので遠慮しておく。 ハルヒ: またやりましょうね、みんな!こんなに楽しい野球の試合をしたのは、生まれて初めてよ! いや、お前の場合楽しかったのは勝ったからだろ。負けていたらお互いの健闘を称え合う殊勝な仏心なんて、絶対起こしていなかったと断言してやってもいい。 そんな悪態を心の中だけに留めておきながら俺は八面六臂の大活躍をした今日のヒーロー、いやヒロインに目を向けて――。 キョン: ……どうした、長門? 有希: …………。 有希: 今のは警告。これ以上干渉を続けるようなら、独自の判断で制限を解除する。 有希: 涼宮ハルヒは、あなたたちに渡さない。警告を無視した場合、その時は――。 キョン: おい、長門……? 長門: なんでもない。……任務完了。これより通常モードに移行する。 キョン: …………。