Part 01: レナ(冬服): あっ、来た来た!あははは、こっちだよ一穂ちゃん! 一穂(Kanon): あ、レナさんだ! おーい! 美雪(冬服): あ、ちょっと一穂!足元不安定なのに走ったら……! 一穂(Kanon): みんな揃って……わぁっ?! 一穂(Kanon): い、いたたたた……。 名雪: 一穂ちゃん、大丈夫? 一穂(Kanon): ……は、はい。 名雪: ここのあたりって朝は、踏み固められた雪が氷になってることが多いんだよ。 名雪: ごめんね。気をつけてって声をかければよかったね。……手、貸してあげようか? 一穂(Kanon): す、すみません……っと。 菜央(冬服): 一穂、大丈夫? 怪我とかしてない? 美雪(冬服): すみません、名雪さん。一穂がご迷惑をおかけして。 名雪: ううん、気にしないで。 レナ(冬服): 一穂ちゃん、大丈夫かな……かな? 名雪: たぶん、平気だと思うよ。怪我もしてないみたいだしね。 一穂(Kanon): ご、ご心配をおかけしました……。 魅音(冬服): 名雪さんも、来てくれたんだね。 名雪: 駅前にホテルがあるって教えたのはわたしだけど、泊まったことないから大丈夫かな、って思ってついて来ちゃった。 魅音(冬服): いやー、いい宿だった! 駅前のビジネスホテルなのに大浴場があったから、ゆっくりつかって、その後はよく眠って今はすっかり元気全開だよ! 沙都子(冬服): とはいえ魅音さん、朝食は食べすぎでしてよ。バターロールがあっという間になくなっていて、さすがに驚きましたわ。 魅音(冬服): 腹が減っては戦はできぬ、ってね。まぁ私たちの場合「戦」自体は昨夜やったから、順番としては逆なんだけどさ。 沙都子(冬服): ……で、一穂さんたちはどうですの?お三方は名雪さんの家でお世話になっているとお聞きしておりましたけど。 羽入(Kanon): あぅあぅ、ちゃんと休めましたですか? 一穂(Kanon): うん。私たちだったら、大丈夫だよ。名雪さんのお母さんって料理上手で、夜も朝もおいしいご飯をいっぱいご馳走になったから。 名雪: ……和食がいい、って一穂ちゃんが言ってくれてほんとによかったよ。もし「あれ」が出てきたらどうしよう、って思ってたから……。 菜央(冬服): ? どうしたの、名雪さん? 名雪: ううん、なんでもないよ。あははは……。 美雪(冬服): いやー、でも名雪さんのおかげで助かったよ。まさかホテルの部屋が6人分しか確保できないなんて、思わなかったからさ。 菜央(冬服): 旅費のことに加えて、宿の確保のことも事前に考慮しておくべきだったわね。 一穂(Kanon): そ、そもそも旅行自体が日帰りの予定だったから……仕方がないよ。 美雪(冬服): まぁ昨夜のこといい、この町に来て早々に名雪さんと知り合えたのは幸運というか……運命って言っていいくらいの巡り合わせだね。 名雪: それはお互いさまだよ。私だってみんなとここで出会ってなかったら、大変な目に遭ってたのかもしれないんだもん。 名雪: 家に帰って、お母さんと真琴が倒れてるのを見た時なんて……頭の中が真っ白になって、すごく怖かったんだから。 梨花(Kanon): みー。でも、2人とも無事に意識を取り戻して本当によかったのですよ。 羽入(Kanon): あぅあぅ、そうなのです。きっと奇跡の力が、僕たちを良い方向へと導いてくれたのですよー。 名雪: ……。奇跡、……か。 沙都子(冬服): あら……どうしましたの、名雪さん?何か私たち、お気に召さないことでも申し上げましたかしら? 名雪: あ、ううん。そうじゃなくってちょっと、思い出したことがあっただけだから。 一穂(Kanon): あ、あの……ところで名雪さん、きょうはどちらに? 名雪: よかったら今夜、みんなにご馳走をしたいってお母さんが言ってたんだけど、どうかな? レナ(冬服): はぅ、お誘いはとってもありがたいけど……こんなに大人数で押しかけていいのかな、かな? 名雪: うん、大丈夫。テーブルと椅子は準備するって、お母さんも張り切ってたから。 菜央(冬服): 明け方に物音がしてたのは、もしかしてそれだったの……? 美雪(冬服): んー、どうする魅音?少しくらいゆっくりしてもいいんじゃない、って私は思うんだけどさ。 魅音(冬服): そうだね。あと、せっかく来たんだからこの町を観光するってのも悪くないかな。 レナ(冬服): あははは、それも楽しそう!レナは異議なーし、だよっ。はぅはぅ♪ 名雪: それじゃ、わたしが案内してあげるね。この町で見どころと言えば――。 Part 02: 魅音(冬服): おじゃましまーす! 秋子: はい、いらっしゃい。 真琴: 遅ーい! 準備して待ってたのにっ! 名雪: ごめんね。ちょっと、この町を案内してきたんだよ。……はい、お土産。 真琴: あぅーっ、肉まんっ! 名雪: 真琴が好きだって言ったら、みんながお土産にって買ってくれたんだよ。 真琴: わーいっ! 秋子: ふふっ……肉まんもいいけどご飯の準備、できてるから。名雪、並べるのを手伝ってもらっていい? 名雪: うんっ。ちょっと待っててね。 美雪(冬服): あっ……。 魅音(冬服): うわっ……すごいご馳走!これ、一流ホテルのディナーみたいだよ! 沙都子(冬服): こんなにたくさん、私たちのために準備してくださったんですの……?ありがたい以上に、申し訳ないですわ。 秋子: 遠慮しないで。せっかくたくさんのお客様が来てくれたから、ちょっと張り切りました。 一穂(Kanon): ちょ、ちょっとなんてレベルじゃないと思うんですけど……! 美雪(冬服): …………。 レナ(冬服): ありがとうございます、名雪さんのお母さん。何かお手伝いできることありますか? 秋子: 大丈夫よ。あとは1品だけだから。……さぁみんな、席について。 一穂(Kanon): ありがとうございます。わぁ、どれもおいしそう……! 秋子: それと、はい最後の1品。 羽入(Kanon): 焼きたてのパン、と……ジャム? 名雪: そ、そのジャムは……!? 沙都子(冬服): あらっ、綺麗な色のジャムですわね。 秋子: わたしが作ったジャムなの。こうやって、パンにたっぷり塗って……はい、どうぞ。 レナ(冬服): ありがとうございます。いただきます! レナ(冬服): …………。 菜央(冬服): レナちゃん? レナ(冬服): …………。 沙都子(冬服): レナさん、どうかなさいまして? 秋子: お口に合うかしら? 魅音(冬服): あの、これなんのジャムなんですか? 秋子: 企業秘密です。今、みんなの分のパンも用意するわね。 レナ(冬服): …………。 菜央(冬服): レナちゃん……? レナちゃん?!どうしたのレナちゃん?! 沙都子(冬服): あのレナさんが、微動だにしない……?! 魅音(冬服): な、名雪さん、あのジャム……。 名雪: ……お母さんの、自信作なんだ……よ? 魅音(冬服): なんで言いながら、目を反らすのさ?! 真琴: ……に、肉まん食べようかな~っ! 沙都子(冬服): ちょっ……真琴さん?! 羽入(Kanon): このジャムに、いったい何が……?! 一穂(Kanon): わ、私はパンよりもお米の方が好きだから……。 梨花(Kanon): 一穂、好き嫌いはよくないのですよ。 一穂(Kanon): ご、ごめんなさいっ……!あ、でもその、えっと……! 美雪(冬服): あー、ちょっと私、お手洗いに……。 魅音(冬服): あ、美雪?! ちょっと美雪! 名雪: …………? 秋子: はい、ジャムたっぷりのパンをどうぞ。 魅音(冬服): え、あ……あ……。 沙都子(冬服): み……魅音さん、食べ物を粗末にするのはよくありませんわ。 魅音(冬服): ほー……じゃあ沙都子、これ半分こね! 沙都子(冬服): な、なんとその手でっ?! 梨花(Kanon): …………。 Part 03: 美雪(冬服): ……。はー……。 名雪: 美雪ちゃん? 美雪(冬服): あ、名雪さん……ってなんか私たち、名前が似てますねー。あははは。 梨花(Kanon): ……美雪? 美雪(冬服): あれ……梨花ちゃんまで。2人ともどうしたの? 梨花(Kanon): それはボクのセリフなのですよ。……名雪はどうして、ここに? 名雪: 美雪ちゃん、ジャムを食べてないのに元気がないみたいだから、どうしたのかなって心配になって。 梨花(Kanon): ジャム……? 名雪: う、ううん。なんでもない! 美雪(冬服): あー、その……大したことじゃないんですよ、ほんとに。 美雪(冬服): ……名雪さん、家族はお母さんだけって言ってましたよね。 名雪: えっ? う、うん……。 美雪(冬服): 私も、父がいない母子家庭で……。水瀬さんのお母さんにちょっと似てるんですよ。髪型とか、雰囲気とか……。 名雪: わたしのお母さんが……? 美雪(冬服): はい……で、さっきのリビングの騒ぎで私のお母さんも友達が遊びに来た時、お菓子とか色々作ってくれたなー、って。 美雪(冬服): それを思い出したら、今頃どうしてるかなって思ってちょっと……寂しくなって……。 名雪: …………。 美雪(冬服): あ……あははは。すみません、変なこと言っちゃって。 美雪(冬服): 気持ち切り替えたら、すぐ戻ります。だからこっちのことは気にしないで、みんなで盛り上がっててください! 名雪: ……。美雪ちゃんは最近、お母さんと会ってないの? 美雪(冬服): ……ちょっと、事情があって。正直、奇跡でもなければ再会できないかもー……なんて。 梨花(Kanon): 美雪……。 名雪: ……。奇跡は、起きるよ。 美雪(冬服): えっ? 名雪: 実はね、少し前に祐一が……前に話したわたしのいとこの男の子が、似たようなことを言ってたの。 名雪: たとえば、届けられなかった想いを相手に伝えたいという願いが叶ったり……諦めかけてた希望が実現したり……。 名雪: そんな奇跡が、この町にはある……って。 美雪(冬服): …………。 名雪: わたしの時も……少し前に、お母さんが大怪我したの。でも、お医者さんがびっくりするくらいの早さで元気になっちゃったんだよ。 美雪(冬服): えっ……そうなんですか?そんな風には、全然……。 名雪: うん。だからわたし、奇跡が起きたのかなって思ってる。 名雪: だから……美雪ちゃんにもきっと、起こる。少なくとも私は信じてるし、信じたいんだ。 梨花(Kanon): ……。もし、それが本当だったら……この町は夢のように幸せな場所なのですよ。 名雪: うん、わたしもそう思う。 美雪(冬服): う、うーん……ごめんなさい、ちょっと理解に時間もらえませんか?奇跡、奇跡……奇跡? 名雪: 大丈夫だよ。正直に言うと、わたしも祐一が話してくれたことの全部は、よくわかってないんだ。 名雪: でも、奇跡はきっと起こる……ううん、起こせると思うの。 梨花(Kanon): ……名雪は、この町じゃなくても奇跡が起こると思うのですか? 名雪: 奇跡は、どんな場所でも起こるよ。……祐一だったらきっとそう言うだろうし、わたしもそう思う。 名雪: それにもしかしたら、もうその兆しがあるのかもしれない……。 名雪: だからきっと、美雪ちゃんはまたお母さんに会えるよ。 美雪(冬服): ……。ありがとうございます。 美雪(冬服): にしても、そのいとこさんのこと、すごく信頼されてるんですね。そういう人が側にいるって羨ましいです。 名雪: 祐一はたまに嘘つきだし、約束したことをよく忘れるのは欠点だけど、とっても優しくていい人だよ。 名雪: 約束したことをよく忘れるのは、欠点だけどねー。 美雪(冬服): ……2回繰り返したよ。どう思う、梨花ちゃん。 梨花(Kanon): みー。きっと過去に祐一と何かあったのですよ。 美雪(冬服): ……根が深いのかもしれないから、あんまり深く突っ込まないようにしよう。 梨花(Kanon): それがいいのですよ。 一穂(Kanon): みみみ、美雪ちゃーん! 助けてぇ! 菜央(冬服): 待ちなさい、一穂!家主の優しさを無駄にするつもり?! 魅音(冬服): あんたも食べるんだよ、このジャムを……! 沙都子(冬服): こうなったら一蓮托生ですわ!一穂さんだけ逃がしませんのよーっ! 羽入(Kanon): 梨花~!どこに行ったのですか梨花~っ?! 美雪(冬服): おぅ、リビングがいろんな意味で大盛り上がりだ。 名雪: あはは、じゃあそろそろ戻ろうか。 梨花(Kanon): ……美雪、大丈夫ですか? 美雪(冬服): うん……もう大丈夫。ちょっと喋ったら、楽になったよ。名雪さん、ありがとうございます。 名雪: うん、どういたしましてだよ。 梨花(Kanon): みー。一穂といい美雪といい、名雪は面倒見がいいのですよ。 美雪(冬服): 一穂が転んだ時も、すぐに駆けつけてくれたもんね……今の言葉、なかなか身に染みました。 美雪(冬服): 私も、奇跡を信じてみようと思います。お母さんに、また会えるって。 名雪: うん。 名雪: あ、でも……ジャムは、その……。 美雪(冬服): ……名雪さん? 名雪: ふぁいと、だよ。 美雪(冬服): なんか急に突き放された?!何がふぁいとなんですか?! 梨花(Kanon): みー……いったいどんなジャムなのでしょうか。ぶるぶるがたがたにゃーにゃーなのです。 美雪(冬服): こ、ここで奇跡が起きて、私たちはジャムをおいしく食べられるとか……そういうことってないかな?! 名雪: ……それはさすがに無理だと思うよ。 梨花(Kanon): ジャムに奇跡を求めてはいけないと思うのです……ふぁいと、おー、なのですよ。 美雪(冬服): うぅう……おーっ! 梨花(Kanon): さ、名雪も一緒に。 名雪: お、おーっ……?