彼の足元には、体長二メートルはあろうかという巨大な魚が横たわっていた。形にしてみれば、マグロあたりが近いのかもしれない。都会育ちのオーフェンには、
魚の腹──真っ白というか、銀色の
そこまで見たときには、もう魚は身動きひとつしなくなっていた。
「な、なんですか、これ……?」
べったりと顔についた
「分からねえよ。自分まで、クリーチャーに改造していたんだ、この馬鹿……」
「……え?」
「ただ言えることは……これが、ラモンだかキエフだか分からない、黒魔術士フォノゴロスの
そして……
気配を感じた、というよりは、恐らくそこにいるんだろうという直感で、オーフェンはふりかえった。足元で、濁り水が音を立てる。ふりむいた先には──
天上の穴から、黒い
「ニゲラレルモノカ──フォノゴロス──」
ちら、とマジクを見やると、少年はぞっとしたように、
「ぼくだけ逃げてきたんです。
そこまで言って、続けられなくなる。マジクが震えながらまた目に涙を浮かべるのを見てから、オーフェンはゆっくりと足元でぐったりしている魚を指し示した。
「フォノゴロスなら、こいつだ。もう死んでいる」
が、亡霊──サミイは、
「ソレハ──クリーチャー・ダ──フォノゴロスデハナイ──」
「くっ……」
(まさか……フォノゴロスの奴、サミイから逃れるために自分を改造したんじゃねえだろうな)
オーフェンは、わずかに腰を落とした。『亡霊』相手にどんな魔術が通じたものか、見当もつかないが……
と、そのとき、背後で扉が開く音が響いた。オーフェンはふりかえらなかったが、その扉を開けたヒリエッタがきっぱりと言うのを聞いていた。
「ようこそ。オーフェン。紹介しなければならないわね──彼がわたしの本当のスポンサー。サミイよ」