だが兄は、まるっきり
「うむ。やはり当初の予定通り『怪奇! ナイフ刺しても死なない男』にすべきであった」
「だから、それをやるのは誰なのさ」
「当然お前だが……やっぱそれよりも『目が光る!
「……なんでぼくの名前を使うんだよう」
「なにを言うかっ!
そう
頭をふりながら起き上がって、あたりを見回す。広場は村のほぼ中心に位置していて、古くなった教会の真ん前にある。村はそれほど大きくもないが、かといって小さくもない。広場から
村というのは街道
と、ドーチンは、足元に落とした
「……にしても兄さん、こんな抜け殻、どっから拾ってきたのさ。こんな大蛇、ここらにいるわけないんだけど」
「うむ」
と兄は、空っぽの革袋をひっくりかえしたりもてあそびながら
「その空っぽの木箱といっしょに、近くの森に転がっていたのだ」
「う~ん……」
ドーチンはうめいて、兄が指さすとおりに木箱を見やった。人が──といっても、地人がなんとかひとり入れるくらいの大きさで、縦横一メートルくらいの立方体である。がっちりと作られていて、この蓋が簡単に取り外せるように改造するのは大変だった。
だが、それはそれとして、ドーチンとしては
「どうした、ドーチン。今日のお前の失敗を
「いや、別に、なんでもないんだけど……」
ドーチンはそう答えて、またちらりと木箱を見やった。その木箱の表面は風化したように、うっすらと汚れていたが、赤いペンキの手書き文字でなにやら記されていた。製造ナンバーらしき数字は、ゼロが五個ほど並んだあと、一となっている。その横の年月日──製造年月日? は、だいたい十年ほど前になっていた。さらには、その下に注意書きがある。天地注意、ワレ物危険、横置厳禁、角突注意、等々……
そして最後に『危険──
◆◇◆◇◆
その村で事件は、誰にも気づかれずにひっそりと起こった。キンクホール・ビレッジ。誰も気にとめない、ただの辺境村。
そしてその事件が起きたとき、本来の当事者は、とっくの昔に死んでいたのだった。